韓国人のヒョング(ハ・ジョンウ)は小さなボートで海を渡り、日本へ密輸入をしている。
いつも、夜に日本へやって来て海岸沖で合図を待ち、合図が来たら車で事務所まで運んで行った。
車で迎えに来る役目の亨(妻夫木聡)は無愛想な男だったが、仕事はきちんとしていた。
届け先はヒョングが “おじさん”と慕っているポギョン(イ・デヨン)の事務所。
ポギョンは幼い頃に母に捨てられて天涯孤独になったヒョングの面倒を見てくれた人物だ。
彼は日本での裏家業で成功しており、ヒョングへの手間賃も良い金額を払ってくれていた。
ある日、ヒョングは布に包まれて縛られた女性を運ぶように指示される。
生きているかも分からない人間を運ぶことに難色を示すが運ばされる羽目になってしまった。
しかも、日本へ着いているのに、なかなか海岸から合図が来ない。
ようやくやって来た亨はやはり無愛想に女性を車に乗せると、
いつもの事務所とは違う場所へ運んで行った…
人間関係も背景もストーリーもなかなか複雑で、そしてとても痛々しい物語でした。
母に捨てられた痛みを胸に抱えながら生きている孤独なヒョング。
両親は居らず、痴呆症の祖母と水商売をしている妹・奈美(徳永えり)や
彼女の産んだ3人の子供たちと暮らしている亨(妻夫木聡)。
この二人が織り成す物語です。
実は亨の妹・奈美はポギョンの息子・隆司(柄本佑)の妻ですけど隆司と一緒に暮らしては居らず、
子供たちと共に実家に居座っています。
しかも一番末の乳幼児は重い疾患を持っていて、手術しないと命は危うい状況です。
そんな家族を抱えている亨は、いつも金に困っていて身動きが取れず、人生を諦めていました。
自分の運命を呪っているような二人が出会った時、絆が生まれていきました。
裏の世界に身を置きながらも、非情さとは真逆の情の深さを見せる亨に
誰にも心を開かずに生きて来たヒョングは親しみを感じ始めます。
そして、二人は誘拐されてきた娘の父親を探すという共同作業をしながら、
段々と絆を深めていきました。
それにしても、設定もストーリーも入り難い作品でした。
それぞれのキャラクターの置かれた状況がなんとも痛々しくて、息がつけない気持ちになりました。
ほっと出来るシーンがほとんど無いのです。
その中ではヒョングと亨が仲良く肩を組んでカラオケを歌うシーンは本当に楽しそうで
観ている方もにっこり出来ました。
“泣かない男はいない”というタイトルの通り、涙のシーンが心に残りつつも、
観終わった時、何故かちょっとだけファンタジーな気分になった1本です。
監督:キム・ヨンナム 出演:ハ・ジョンウ 妻夫木聡 イ・デヨン チャ・スヨン 徳永えり 貫地谷しほり 柄本佑
2009年 日本/韓国 原題:THE BOAT/NO BOYS, NO CRY
(20090822)