2004年。イラクでは爆弾テロが日常化していた。
アメリカ軍の爆発物処理班であるブラボー中隊の3人は朝から晩まで処理に追われていた。
ブラボー中隊の任務明けまであと2ヶ月をきったある日、
処理をしていた爆弾が爆発してチームリーダーが殉死してしまう。
交代で来たのはウィリアム・ジェームズ二等軍曹(ジェレミー・レナー)。
彼はアフガンにも従事し、数多くの爆発物を処理してきたスペシャリストだった。
だが、基本に忠実でチームワークを大切にしていた前任者とは違い、ジェームズはスタンドプレイを連発。
サポート役のサンポーン軍曹(アンソニー・マッキー)やエルドリッジ技術兵(ブライアン・ジェラティ)は
彼の無鉄砲さと自分たち二人を無視した行動に不満を募らせていた。
それでも、彼らが休む間も無く、次々と爆弾物処理の指令は入ってきた…
作品がもたらすリアルさと臨場感に、131分間どっぷりと浸っていました~
舞台は今から6年前のバクダッド郊外です。
市民が普通に暮らしている街中で、次々と強烈な威力を持つ爆発物が発見されます。
その発見と処理を専任するブラボー中隊ジェームズ二等軍曹は、とにかくスタンドプレイばかりしています。
800以上の爆発物処理を行ってきたジェームズの作業の目的は起爆装置を外すこと。
仲間のサンポーン軍曹に時間がかかり過ぎたり、周囲にいる怪しい人物が動き始めて
危険だから下がれと言われても無視し、作業を続けます。
最終的には爆発物処理は成功するのですけど、
ジェームズの無事を心配している二人はストレスがたまるばかり。
堪らなくなったサンポーンは事故を装って彼を爆死させようかと空想したり、彼と衝突します。
また、気の弱いエルドリッジ技術兵は精神的に弱ってきていて軍医に心配されてしまいます。
そんな彼らは、日常的に詩と隣り合わせの状況に置かれています。
ゴミ袋に入れられて、さり気無く置かれている爆弾。
ひとつを解体したと思ったら、次々とロープで繋がっていた爆弾。
自動車に巧妙に仕掛けられていた爆弾。
爆弾はリモートコントロールもされているので、起爆装置を外すか爆発させるまでは安心出来ません。
そして、街中ではどこで誰が見張っているか分からないのです。
そんな任務についている彼らは自分の人生に絶望を感じています。
エルドリッジは死の恐怖に囚われて、生きる希望が持てなくなっています。
サンポーンは結婚も子供もいないまま死にたく無いと涙ながらに訴えます。
また、一番落ち着いているように見えるジェームズは、妻と幼い子どもをアメリカに残していますが、
彼は自分のような人間が人を幸せに出来ると思えず、妻と離れなくてはと思っています。
でも、彼を心配する妻は彼の家から離れようとしません。
そんな妻にジェームズは言葉をかけたくて電話をかけても、話すことが出来ません。
そして、再び彼は必要以上に命を危険にさらすような行動に走っていきました。
それにしても緊迫感が凄かったです~
日常化している爆弾テロの怖さがひしひしと伝わってきました。
きっと今でもこんな状況があるのだろうなあと考えると、兵士の死者が増え続けるのも納得です(T_T)
また、爆発する怖さだけでなく、死にたくないと思っている同胞をも平気で武器に変えていくような
常識を超えた狂気がこの国を覆っていることも怖かったです。
見終わった時、その狂気の姿を顕わにしたこの作品が高評価されるのも分かるなあと感じました。
戦う側も防御する側も狂わせていく、こんな状況がいつまで続くのかなとため息をついてしまった1本です。
監督:キャスリン・ビグロー 出演:ジェレミー・レナー アンソニー・マッキー ブライアン・ジェラティ レイフ・ファインズ ガイ・ピアース
2008年 アメリカ 原題:THE HURT LOCKER
(20100226)
追伸
この映画は試写会で観ました。公開は3月6日以降の予定です。