北海道の小さな町で暮らしている黒川冬沙子(高岡早紀)。
彼女には付き合っている恋人・水田(鈴木一真)がいたが、
札幌で忙しく仕事をしている彼からの連絡は、最近では途絶えがちになっていた。
でも、彼女は静かな町の落ち着いた生活に安らかな幸せを感じており、
朝から馬牧場で働き、夜には薬局を営む父(北見敏之)と食卓を囲む暮らしを気に入っていた。
ちょうど東京でモデルをしている妹・早知(未希)が一時帰宅し、ガールズトークも楽しんでいた。
そんな冬のある日、父に薬の配達を頼まれた冬沙子はそのお客の家までバスで行くことになった。
薬を届けた帰り道、バスが来るまで時間がかかると分かった冬沙子は、
バス停近くの遊園地を管理している男・門倉(渡部篤郎)に寒さをしのげるところは無いかと言葉をかけた。
彼はその問いに筆談で答え始めた。実は耳は聞こえるが言葉が話せなかったのだ。
そして彼女に暖かい飲みのものを渡してくれた彼の佇まいは、冬沙子の心に何かを残した…
冬の雪の冷たさと役者たちの素のようにみえる自然な演技が印象的な作品でした。
冬の約10日間くらいの物語です。
その10日間で男女の出会いがあり、ひとつの結末が描かれています。
静かな生活の中にある静かな出会いと出来事を
自然な演技とホームビデオのようなカメラワークで映し出していました。
演技が面白かったです。
ワンテイク取り直し無し。脚本には設定は書いてあるけど台詞はほとんどがアドリブ。
そんな中で役者さんたちは自分の中にキャラクターを取り込んで自由に演技しています。
それぞれの役者さんの持つ存在感がそのまま画面に映し出されている感じです。
その雰囲気はまるで本当のお茶の間やガールズトークを見ているようです。
特に渡辺えりさんが演じた近所の噂好きのおばちゃんキャラには笑わされました。
ただ、苦手だったのはカメラワークです。
手持ちカメラで自由に撮っているので画面がかなり揺れます。
家の中の映像でもかなり揺れるところがあるので
乗り物酔いのする私にはじっと見ているのが辛い時がありました。
自然な雰囲気を出しているとは思うのですけど、酔いやすい人には要注意かも知れませんね。
でも、とにかく冬沙子を演じた高岡早紀さんがきれいでした(^^)
地に足の着いているような親しみやすいキャラクターも良かったです。
彼女が傍で親しみを込めて笑ってくれたら、門倉のような孤独な人でなくても惹かれるだろうと思います。
渡部篤郎監督にとって彼女はミューズなのだなあとしみじみ感じました。
ラストを観た時、何ということだろう…と切なくなりました(T_T)
ちょっとした日常にもありそうなことだけに、記憶というものの大切さを考えさせられてしまった1本です。
監督:渡部篤郎 出演:高岡早紀 渡部篤郎 北見敏之 未希 渡辺えり 広田レオナ 鈴木一真
2008年 日本
(20100227)