タクシー運転手のイガル(ドロール・ケレン)は妻と離婚して一人暮らし。
大人しくて争いごとが嫌いな、一目で押しが弱そうだと分かるような性格だ。
彼は元妻と小学生の息子が住んでいるアパートと同じ棟のアパートに住んでいて、今でもよく行き来をしていた。
ある日、妻から息子の学校からのお迎えを頼まれたイガルは、美しい音楽教師リナ(エレナ・ヤラロヴァ)に一目惚れをする。
前日の夕食の時に最近離婚したと聞いていたのだ。
だが、彼女の夫は仕事のためにカナダへ行っているだけで、離婚などしていなかった。
すぐに恋心を鎮めようとしたイガルだったが、静かに想いが募っていった…
ひとつの恋はイガルを少しずつ変えていきました。
イガルは見た目にも優しくてお人好しで気の弱そうな男です。
タクシー運転手をしていますけど、客を信じて無賃乗車されてしまったこともあるほど。
でも、彼はそれも仕方ないとあきらめつつ、日々を過ごしていました。
そんなイガルが恋に落ちます。ロシア出身の音楽教師リナです。
彼女の夫はカナダへ移住する準備として、働く資格をとるためにカナダに長期滞在中です。
最初は勘違いでリナが離婚したと聞いていたのですけど、すぐに今でも結婚中であることが分かります。
でも、抑えようとしても恋心は止められません。
控えめに、でも少しずつ二人の心は近付いていきます。
そんな時、突然、夫がカナダから帰ってきました。
この夫の行動はちょっと面白かったです。
彼は当然、自分が苦労をしている時に妻を心を通わせた男に怒りを覚えます。
しかも、移住には夫婦でいることが必要です。離婚など考えられません。
そして、夫は故意の終わらせ方として、ひとつの方法をとります。
そこが何とも不思議に思えました(^_^.)
それにしても、地味なのに心に残る物語でした。
タイトルの「パリから5時間」はきっといろいろな意味がこめられていると思います。
パリから5時間しか離れていないイスラエルで暮らすことの意味や違い、そして人々の意識など
観る人によって変わってくる気がします。
また、“移住”が生活の一つの選択肢としてある現実に興味を持ちました。
それもイスラエルならではの感覚なのかなあと感じながら見ていました。
物語の終わりに、彼は自分の気持ちを押さえつけずに表に出せるようになります。
それは恋が彼に与えた一番のプレゼントかも知れません。
観終わった時、少しだけ強くなった彼の姿を嬉しく感じてニッコリした1本です。
監督:レオン・プルドフスキー 出演:ドロール・ケレン エレナ・ヤラロヴァ ヴラディミール・フリードマン
2009年 イスラエル 原題:Five Hours from Paris
(20101027)
追伸
この映画は東京国際映画祭で観ました。公開予定は未定です。