2003年、フセイン政権崩壊から3週間後。
少年アーメッド(ヤッセル・タリーブ)は祖母(シャーザード・フセイン)に連れられて
戦争に駆り出されて12年前から行方不明になっている父を探す旅に出た。
以前、父の友人から父がナシリヤ刑務所にいるという手紙を貰ったことがあったのだ。
道行く車をようやくとめた二人は、車を運転していた男の言い値の運賃を払うと
刑務所行きのバスが出ているバグダッドへと向かった。
車の中で二人の旅の目的を聞いたり、現状を嘆いたりと数日間を過ごしてようやく町へつくと
男は祖母に運賃として貰った金を返した。
見知らぬ男にも年老いた彼女の悲しみに心が動かされたのだ。
そして、二人は街の片隅でいつ出るかも知れないバスを待ち始めた…
物語が進むにつれて、その悲しみの深さがじわじわと心の中に突き刺さってきました。
年老いた祖母と幼い孫息子の旅の物語です。
二人の目的は孫の父であり祖母の息子であるイブラヒムを探すこと。
戦争に連れて行かれてしまったイブラヒムは1991年以降に消息を絶ったままです。
いくら戦争が終わったとは言え、交通状態や情勢は最悪です。
乗せてもらった車も途中でアメリカ兵の検問を受けるなど、いろいろあります。
その後に乗ったバスも故障で動かなくなったり、途中で降ろされたりと、一筋縄ではいきません。
それでも刑務所にたどり着いた二人は希望を胸に精一杯の身支度をして受付に入ります。
でも、イブラヒムはそこにはいません。
そして、共同墓地を探すことを勧められてしまいます(T_T)
その頃のイラクでは、共同墓地が次々と発見されていたのです。
埋められている遺体はほとんどが白骨化していて、身元不明のものも多いです。
イブラヒムに生きて会えると信じていた二人は、最初は共同墓地と言われても拒否します。
でも同じ名前だと訪ねた病人は人違いだったりと、希望が少しずつ潰えていきます。
そして、とうとう二人の足は共同墓地へと向かっていきました。
それにしても、覚悟はしていましたけど、あまりの悲しみの大きさに圧倒されました。
国全体が夫や息子を奪われた女性たちの悲しみに覆い尽くされているようでした。
また、この主人公である祖母を演じたシャーザード・フセインさんは女優ではなく監督さんが見つけた人で
実際に夫や子供を戦争で亡くしたり、親戚の遺体を遠い墓地から地元へ移したりと
本当に辛い体験をされていたそうです。
映画の中でも主人公とシャーザードさんの体験が重なって、
まるでドキュメンタリーを観ているような感覚に陥りました。
ラストの展開はショックでした(T_T)
それでも、せめて幼い少年に希望の未来が来ることを願って止まなかった1本です。
監督:モハメド・アルダラジー 出演:ヤッセル・タリーブ シャーザード・フセイン バシール・アルマジド
2010年 イラク/イギリス/フランス/オランダ/パレスチナ/アラブ首長国連邦/エジプト 原題:SON OF BABYLON
(20110701)
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公式サイトはこちらへ http://www.babylon-movie.com/