1938年。ウィーンで画廊を営んでいたカウフマン家は代々美術商をしている名家だったが、
最近はユダヤ人ということで一家を取り巻く状況が悪化しつつあった。
そんなある日、使用人の息子で長いこと行方知れずになっていた
ルディ・スメカル(ゲオルク・フリードリヒ)が突然帰宅した。
兄弟のように育ったヴィクトル(モーリッツ・ブライブトロイ)が喜んで迎え入れた直後に騒動が起き、
ヴィクトルとルディは拘置所に入れられてしまう。
1日後に帰宅した息子とルディをカウフマン夫人は喜んで迎え入れるが
一家の長であるヤーコプ・カウフマン(ウド・ザメル)は笑顔を見せながらも何かを考えるような顔をしていた。
その夜、ヴィクトルが一族の秘密である名画をルディに見せているのを見かけたヤーコプは
名画を隠すための画策を密かに開始した…
父の読みは深かったです。
1938年から1945年までの動乱の時代の中で、ミケランジェロの名画を巡る攻防を描いた作品です。
この名画はカウフマン家の祖先から伝わっていたもので秘密になっていたのですけど、
息子のヴィクトルが気を許してルディに見せたことからナチスの知るところとなります。
実はルディは権力欲しさにナチスへ入っていたのです。
ルディと彼の上官の策略で、絵の没収と共にカウフマン一家は収容所送りにされます。
その数年後、ヒトラーとムッソリーニとの友好の証としてこの名画が登場した時、
実はこの絵が偽物だったことが判明してしまいました。
それにしても、面白い展開でした。
息子の安易な行動を見て全てを予測した父の仕掛けは深かったです。
一方で息子ヴィクトルのキャラクターもちょっと面白かったです。
お坊ちゃまらしい悠長さを持つ性格なのか、
いろいろな状況を受け止めながら運を見方に進んでいきます。
その彼の最後の芝居は、もう答えが分かりながら観ていても痛快でした。
ナチスが絡むと重たい展開になる作品が多い中、純粋にサスペンスとして楽しめることが面白かったです。
観終った時、同じスタッフで未見の『ヒトラーの贋札』も観なくちゃと思った1本です。
監督:ヴォルフガング・ムルンベルガー 出演:モーリッツ・ブライブトロイ ゲオルク・フリードリヒ ウド・ザメル マルト・ケラー ウーズラ・シュトラウス ウーヴェ・ボーム メラーブ・ニニッゼ
2010年 オーストリア 原題:MEIN BESTER FEIND/MY BEST ENEMY
(20110910)
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