山道を進んでいた幌馬車が止まってしまった。わだちに引っかかってしまったのだ。
馬を操っていた男が馬と共に幌馬車を押し始めた時、何かの気配を感じる。
危険を感じた男はナイフを取り出すが時すでに遅く、何者かが背後から襲いかかって来た。
必死に抵抗するものの男は殺されて、幌馬車に放り込まれてしまう。
襲ってきた者は馬に目隠しをして崖まで引いてくると、馬ごと荷馬車を落とした。
その荷馬車には男の幼い息子クレットが乗っていた。
そして、瀕死のクレットを偶然に発見したのは、クレットの親友アンドレウだった…
暗い時代を生き抜こうとする少年の瞳が痛々しかったです(T_T)
ある父子の死と、少年アンドレウが親友の死を見つけるところから始まる物語です。
間もなくアンドレウは父と祖母の家へ向かいます。
母は仕事で家を離れられませんけど、父は何かに追われるようにフランスへ向かい、
アンドレウは祖母や親戚たちと暮らすことになったのです。
祖母の家には叔母たちや従兄弟たちなど、大勢が住んでいました。
学校も転校し、これまでとは違う人々との暮らしの中で、
アンドレウは少しずつ、これまでには気付かなかった世間の目や、
これまでは出会ったことのない人々と関りあうようになります。
特にアンドレウが惹かれた二人の人物、少女と青年は不思議なほど対照的でした。
美人で不思議な魅力を持ついとこの少女は、手りゅう弾で片手の指を失っています。
彼女は笑顔の裏に、暗い秘密と破滅的な欲望を持っていました。
そんな彼女の悪魔的な魅力とは対照的に、明るい笑顔で笑う青年は天使のような印象です。
彼は不治の病に冒されていて、物理的には本当に不自由なのですけど、
その分、心はとても自由で、不吉な予感に苛まれるアンドレウに笑顔と希望を与えてくれました。
それにしても、この暗い時代をそのまま象徴しているような物語でした。
先に観た『
ペーパーバード』もそうでしたけど、この時代は愛し合っている者たちや親子を
無残にも簡単に引き裂いてしまうのですね。
しかも今作では希望を託すためとは言え、暗い秘密と命を引き換えにしてしまう者が出てきます。
その秘密を遺された者たちは抱えて生きていかなければなりません。
その重さを感じた時、ぞっとすると共に、主人公の姿に胸が締め付けられました(T_T)
この作品が本国で大ヒットしたのも興味深く感じました。
改めてこの国の歴史を感じた気がした1本です。
監督:アグスティ・ビリャロンガ 出演:フランセスク・コロメール マリナ・コマス ノラ・ナバス
2010年 スペイン/フランス 原題:BLACK BREAD
(20111009)
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公式サイトはこちらへ http://www.alcine-terran.com/blackbread/追伸
この映画は第8回ラテンビート映画祭で観ました。公開は6月23日以降の予定です。