あまりにも美しくて哀しくて、ちょっと怖い印象の残る物語でした。
厳選された上流階級の客だけが集う高級娼館。
そこでは若い女性たちが毎夜男たちを相手にするためにだけに集団で生活していました。
昼間は数人で1つのベッドに眠り、夕方にかけて起き出すと次第に仕度をし始めます。
気だるそうな彼女たちは楽しくおしゃべりをしながら高級なドレスに身を包んでいきます。
そして、美しく着飾り終えた彼女たちはサロンで男たちを待ち構えつつ
酒とおしゃべりを楽しみながら、今夜の相手を探していきます。
それは男たちも同様です。
高級娼館に来られるようなブルジョア層の男たちが、マダムの案内によりサロンへ通されます。
そこで女性たちを物色し、相手が気に入ったら二人で部屋へ向かいます。
面白いのは男たちも何となく顔見知りなことです。
何となく仲間同士で悪い遊びを楽しんでいるという雰囲気もあるのが微妙に不気味に感じました^_^;
物語の途中では、一人の少女が親の承諾を得ていると主張して娼館に雇われに来ました。
10代の初々しい少女です。
他の女性たちは借金と共にここへ来ているのですけど、この少女は借金ではなくて自分の意思です。
パリで名高い高級娼館は、内実を知らない田舎の少女にとっては
美しい服が着られる憧れの場所だったようです。
でも、やがて少女はここでは自由の無い生活しかできないと悟ります。
同伴者という監視の目が無ければ、外出も出来ないのです。
どんなに客筋が良いとは言っても、病気を移される娼婦も出てきます。
そして、時には狂気に取り付かれた客に傷付けられてしまうこともあるのです。
いつしか輝かしい夢は消え去り、少女は無言で娼館を出て行きます。
そして時を同じくして、娼館自体も不況の波に飲み込まれていきました。
それにしても、狂気と美しさに彩られた娼館の世界は何とも言い難いものがありますね。
それだけに儚い美しさを醸し出している女優たちには引き付けられました。
昼間の疲れ果てた姿と、夜のほの暗くて気だるい雰囲気の中で哀しげに輝いている姿。
その時代に取り残されたような彼女たちの美しさは名画のように印象に残りました。
娼館が無くなった時代の彼女たちを暗示するラストシーンに考えさせられました。
観終わった時、娼婦たちはそれぞれどんな人生を送るのだろうなと想いをめぐらせた1本です。
監督:ベルトラン・ボネロ 出演:ノエミ・ルボフスキー アフシア・エルジ セリーヌ・サレット アリス・バルノル アデル・エネル ジャスミン・トリンカ イリアナ・ザベット
2011年 フランス 原題:House of Tolerance/L'Apollonide, souvenirs de la maison close
(20111024)
追伸
この映画は東京国際映画祭で観ました。公開は6月2日以降の予定です。