彼女の結婚生活はあまりにも哀しいものでした。
カリファー(マーシャ・ティモシー)は23歳の美容師でファッションにも気を使う今時の女性です。
でも、母が病で亡くなった後は弟と父の面倒を見ている一家の主婦代わりになっていました。
父には以前に母の治療代として借金をしており、父の細々とした稼ぎでは苦しい生活になっています。
そのために、カリファーは大学を諦めて働いているという過去があり、
せめて弟にはきちんとした教育を受けさせたいと心に決めていました。
そんなある日、父がカリファーにお見合いの話を持ってきます。
相手は輸入業を営んでいる裕福で、父の知り合いの紹介というだけで彼女は会ったこともありません。
でも、借金の取立てに苦しんでいて弟の学費も危ういという現状から、彼女は結婚を決断します。
結婚式を挙げ、彼女は厳格なイスラム教の夫に従ってスカーフを巻くようになったりもしたのに、
夫は仕事でひと月に数日しか家に居ません。彼女は寂しい想いを抱えます。
しかも、せっかく妊娠をしたのに夫のいない間に流産してしまいます。
そんな彼女に夫は信仰心が足りないせいだと、今度は全身を黒く覆うチャードルを着させます。
チャードルを着ている女性の多い国では、その姿が普通なので違和感はありません。
例えばチャードルを着たことでカリファーが知り合いになる若い女性は、サウジアラビアから
夫の転勤についてきた主婦で、自分がチャードルを着ることに誇りを持っていると笑顔で語ります。
でも、その主婦も外を一人で歩くことはしません。外出は夫の運転する車でのみです。
インドネシアの都会ではチャードルは違和感のある姿になってしまうのです。
そして、夫がいつも不在のカリファーは一人での外出中にその姿でバスを待っていた時に、
見知らぬ女性から肉親を奪ったテロリストといわれの無い怒りをぶつけられます。
そして、さらに彼女には夫の不義理という辛い現実が待っていました。
それにしても、何とも哀しい結婚でした。
例え紹介だろうとお見合いだろうと、彼女が幸せになるのだったら良かったのですけど、
彼女はそれまでの明るい笑顔や仕事への誇り、そして唯一救いになるはずの愛も失くしてしまうのです。
全てを知った彼女は鏡に映った自分の姿を見つめます。
そしてチャードルを脱ぎ、再び自分の足で歩んでいくという決心をしました。
ラストになって、ようやく彼女の名前“カリファー”=“導く人という意味”だったのが理解できた気がしました。
人生は気付いた時が新しい一歩になるのだなとしみじみ感じた1本です。
監督:ヌルマン・ハキム 出演:マーシャ・ティモシー インドラ・ヘルランバン ベン・ジョシュア ヤヤン・C・ヌール
2011年 インドネシア 原題:KHALIFAH
(20111022)
追伸
この映画は試写会で観ました。公開予定は未定です。
追伸2
これでようやく東京国際映画祭で観た宿題が終わりました(^^ゞ
今年は14本観ることが出来ました。
でも、見逃した映画がたくさんあります。
いつか思う存分観ることが出来たらなあと思ってます☆