東京・日本橋にある麒麟の像の前で一人の男(中井貴一)が倒れた。
男は腹部をナイフで刺されており、警官が声をかけた時には息絶えていた。
だが、殺人事件として警察が調べ始めたところ、彼が刺された場所は倒れた場所から離れた地下道だった。
瀕死の重傷を負った状態で歩いたとしたら、7、8分もかかる場所だ。
彼は何故、誰にも助けを求めずにここまで歩いたのかという疑問が沸き立つ中、
緊急配備で怪しい若者が発見される。
だが、その若者は警官の手を振り切って車道へ飛び出し、意識不明の重態になってしまった…
すべては“麒麟の翼”から始まっていました。
ひとつの殺人事件から始まる加賀恭一郎(阿部寛)シリーズの新作です。
被害者・青柳武明(中井貴一)はあり企業の製造部長で、誰もが真面目な人柄を認めるような人です。
ただ、会社からも家からも遠い日本橋にどうして彼がいたのかは不明です。
一方、重態に陥った容疑者・八島冬樹(三浦貴大)は青柳のかばんを持っていたこともあり、
意識不明とは言え警察は犯人だと断定しながら捜査を進めていました。
被害者と容疑者の背景を調べているうちに、以前に八島が派遣されていた工場が
青柳のいた企業のものだったことや、八島はその工場を突然にクビになっていたことを突き止めます。
怨恨で繫がったと喜ぶ捜査当局は、証拠固めだけに力を注ぎ始めます。
でも、クビになった理由が明らかになった時、次第に情報が歪み始めてしまい、
それを信じたマスコミや世間の視線は、容疑者だけでなく被害者家族をも傷付け始めてしまいました。
それにしても、深い事件ですね。
何故この事件が起きたかというところを突き止めていく加賀の視点と共に観ていたのですけど、
そこまで遡るのかとびっくりでした。
本当に単純では解けない事件で、やっぱり加賀さんならではですね。
ちゃんと根源まで辿ってけりをつけているのも頼もしかったです。
また反面、バレなければ罪を逃れられると安易に考える人が増えている現実が怖かったです。
様々な人の想いが積み重なりながら展開されていて、観ていて切なかったです。
“死に行く者の最後のメッセージを受けとめるのは生きている者の義務”という言葉がドーンと胸に響きました。
原作をじっくりと読んで、もう一度みんなの想いを感じたいなと思った1本です。
監督:土井裕泰 出演:阿部寛 新垣結衣 溝端淳平 中井貴一 松坂桃李 三浦貴大 鶴見辰吾 劇団ひとり 田中麗奈 山崎努
2011年 日本
(20120128)
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