人は何歳になっても父の前では子供に帰るものなのだなとしみじみ感じました。
元人気ロックスターで、今は音楽とはかけ離れた生活を送っているシャイアン(ショーン・ペン)の物語です。
彼は長年連れ添った妻ジェーン(フランシス・マクドーマンド)と豪邸に住んでいます。
家族の縁は薄くて、子供はいませんし、父親とは30年も音信普通です。
小さな声で話し、動作もゆっくりに見えるシャイアンはとても静かに生きていました。
外出と言えば、近所への買い物や生計の基になっている株取引のために投資会社へ行くくらいです。
彼はあまりにも有名人だったので、外を歩くと今でも人の注目を浴びてしまいます。
でも、独特のファッションとメイクは、いつもしっかりときめていました。
ある日、彼の元に父親が危篤という知らせが入ります。
恐怖心から飛行機に乗れない彼は船旅で父の元へと向かいましたが、着いたのは亡くなった後でした。
30年ぶりに会った父の姿とその死に、シャイアンは泣き崩れます。
静かな葬式が終わった後、彼は従兄弟から父の遣り残した仕事のことを伝えられます。
それは、あるひとりのナチスの残党を探し出すということでした。
そして、彼は車でアメリカを縦断する旅に出る決心をしました。
それにしても、繊細なシャイアンの佇まいを体現するショーン・ペンはさすがでした。
あまり説明が無い物語なので、観ていて所々悩んでしまうところもありましたけど、
心に絶望と悲しみを秘めながら道を進んでいく主人公の姿には心を動かされました。
無表情が多い中で時々おちゃめにもなるところは可笑しかったです。
そして、必然と偶然から旅の目的地が判明した時、彼の本当の心が少しずつ見えてきた気がしました。
観終った時、ショーン・ペンがこの監督さんを気に入ったのも分かるなあと思いました。
帰り道、頭の中に「THIS MUST BE THE PLACE」がずっと流れている気がした1本です。
監督:パオロ・ソレンティーノ 出演:ショーン・ペン フランシス・マクドーマンド ジャド・ハーシュ イヴ・ヒューソン ケリー・コンドン ハリー・ディーン・スタントン デヴィッド・バーン
2011年 イタリア/フランス/アイルランド 原題:THIS MUST BE THE PLACE
(20120704)
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