広告界の秀でた才能が国の運命を変えていきました。
広告会社に勤める一人の男を中心に、国の未来を変えた国民投票を描いた物語です。
レネ(ガエル・ガルシア・ベルナル)はその宣伝の才能で会社の中でも一目置かれている若者です。
そんな彼のもとに、野党陣営のブレーンから自陣のキャンペーンをして欲しいという以来が来ます。
レネのボスであるグスマン(アルフレド・カストロ)は権力者と繋がりがあり、もちろん与党サイドです。
そのこともあって、面倒を嫌がったレネも野党連合陣営からの依頼を断りました。
でも、レネは彼の妻であり可愛い一人息子の母でもある活動家ベロニカ(アントニア・セヘルス)が
後ろ手に縛られた無抵抗の状態で警官に殴られるのを見てしまいます。
こんな嫌な世の中を変えたいと思い始めたレネは、野党連合陣営の宣伝を担当する決意をします。
でも、当時の野党の人たちでさえ、選挙の負けは決まっているので、せめて自分たちの主張が
国民に伝えられたらという程度の弱気な状況でした。
それにしても、テレビの放送というのは大きな威力を発揮するものなのですね。
陣営は自分や自分たちの受けた痛みを伝えて“NO”という意志を伝えたいと動いているのですけど、
レネは彼らが創ってきた映像を見てこれではダメだと反対します。
彼は哀しく暗いばかりの映像を国民たちは見たくないだろうと思いました。
そして、無記名だと言われても、これまでの過去から思い起こすような報復を恐れる人は
NOと思っていても、この映像を見て余計に投票所へ行かなくなってしまうと考えたのです。
そんなレネの創り出した映像は、自由と明るい未来への憧れをテーマにしていました。
まるで飲料水のCMのように楽しそうな映像に、政治家たちからは反発もありましたけど、
国民たちはその明るさに惹かれていきます。
そして、それは大きなブームとなって国を大きく動かして行きました。
これが20数年前のことかと思うと改めて色々考えさせられてしまいました。
また、与党と野党の番組映像が当時のものをそのまま使っていたのも面白かったです。
この変化が現代のチリへと繫がっているのだなとしみじみ思った1本です。
監督:パブロ・ラライン 出演:ガエル・ガルシア・ベルナル アルフレド・カストロ ルイス・ニェッコ アントニア・セヘルス マルシャル・タグレ
2012年 チリ/アメリカ 原題:NO
(20121027)
追伸
この映画は東京国際映画祭で観ました。公開は2014年8月30日以降の予定です。