演劇への熱意が真っ直ぐに伝わって来ました。
「ジュリアス・シーザー」の舞台が終わったところから始まる作品です。
観客たちはスタンディング・オベーションで役者たちの演技を称えています。
舞台の照明が落ち、帰ろうと声をかけられた役者たちが戻ってきたのは刑務所でした。
彼らは重罪で長い刑期や終身刑を科せられた、レビッビア刑務所の重警備棟の囚人たちだったのです。
この刑務所では演劇実習として毎年、舞台公演が開かれています。
この舞台の評判を聞いた監督さんが公演を観に行き、この映画の企画を考え付きました。
映画の題材は彼らが「ジュリアス・シーザー」を演じるまでを撮ること。
そして、実際の公演の半年前に行なわれたオーディションから撮影は始まりました。
すぐに思ったのは、彼らはみんな本当に演技が上手いことです。
まるで役者が囚人の役を演じながら、舞台に立つ物語を演じているような感じです。
オーディションでは、悲しみと怒りの2つのバージョンで自分の名前等を話すのですけど、
悲しい時は本当に嘆き悲しんでいるように、怒りの時はその激しさに圧倒されてしまうほどの感情が
スクリーンからも伝わって来ました。
そして、もうひとつは単純なドキュメンタリーではないことです。
ハンディ・カメラとかではなく、ちゃんとセッティングされたカメラで撮っていて、
ひとつのシーンで画面も切り替わっています。
後でパンフレットを読んだら、ちゃんと脚本が書かれているそうです。
台詞とかがある訳ではないとは思いますけど、ある意味、囚人たちは自分が舞台を演じるという役を
演じていたのかも知れません。
でも、自分という役以上に「ジュリアス・シーザー」の舞台を演じることを大切にしているように感じました。
稽古の全てを、そして、もしかしたら一生出ることは無い外の世界への想いをのせて舞台にいるようでした。
それほど舞台での演技は感情がほとばしっていて熱かったです。
そして、舞台が終わった時の誇らしげな表情が彼らの心の全てを物語っているようでした。
舞台がすべて終わり、独房へ帰る時の表情が何とも言えなかったです。
観終わった時、彼らにとって舞台とは何なのだろうなあと考えてしまった1本です。
監督:パオロ・タヴィアーニ ヴィットリオ・タヴィアーニ 出演:コジーモ・レーガ サルヴァトーレ・ストリアーノ ジョヴァンニ・アルクーリ アントニオ・フラスカ フアン・ダリオ・ボネッティ ヴィンチェンツォ・ガッロ ロザリオ・マイオラナ ファビオ・カヴァッリ
2012年 イタリア 原題:CESARE DEVE MORIRE/CAESAR MUST DIE
(20130220)
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