哀しい歴史は繰り返されていました(T_T)
1986年4月25日から始まる物語です。
アーニャ(オルガ・キュリレンコ)は明日に結婚式を控えて幸せいっぱいです。
未来の夫ピョートル(ニキータ・エンシャノフ)と明日を待ちわびるように語らっていました。
また、アーニャたちがボートを浮かべている川辺では、幼い息子を連れたアレクセイ(アンジェイ・ヒラ)が
息子ヴァレリーのために子供の背丈の林檎の木を植えていました。
翌日のプリピャチは朝から大雨に見舞われました。
森林警備員のニコライ(ヴャチェスラフ・スランコ)がいつもの通りに仕事場へ向かおうとすると、
軍が道路を封鎖していました。
身分証を出して解放されますけど、その時、ニコライは森の木が変色していることに気付き、
何か異変が起きていると感じます。
一方、アーニャは結婚式を迎えて嬉しさでいっぱいです。多くの人の祝福に笑顔がたえません。
不安定な天気で突然に雨が降ったりしていても、笑いながら雨宿りしていました。
でも、披露宴はまだまだという時に、消防士のピョートルを同僚が呼び出しに来ました。
大規模な森林火災が起きて自分も行かなくてはならないと言うのです。
今日は結婚式だから行かないでと訴えるアーニャにピョートルは
すぐに戻ってくるからと言い残して去っていきます。
アーニャは呆然とその姿を見送りました。
それにしても、切ない物語でした。
あたりまえにあった普通の幸せが一瞬の事故で消え去ってしまったのです。
ピョートルは二度と美しい妻アーニャに会うことは叶いませんでした。
発電所で働いていた技師アレクセイは原発の事故を知らされますが、
守秘義務のため誰にも言うことが出来ません。
妻と幼い息子を密かに避難させると、自分は仕事のために町に残ります。
でも、そのまま家族と再会することはありませんでした。
そして、アーニャは心の傷を癒せないまま町から遠くへ離れることが出来ず、
10年が過ぎた今ではピョートルの町を観光案内するガイドになって、半月ごとに故郷へ通っています。
でも、放射能を多く浴びている彼女はやつれて病的な美しさを持つ儚げな姿になっていました。
映画の撮影は現在も立入禁止区域になっているピョートルで行なわれていて、
ゴーストタウン化した町並みも寂れた遊園地もそのまま映し出されていました。
そして、この映画の編集をしている時に、日本の原発事故が起きたそうです。
半世紀が過ぎて同じような悲劇が起きるなんて…と思うと観ていて何とも言えない気持ちになりました。
観終った時、幸せな過去に取り付かれたまま命を費やしていく亡霊のようなアーニャの姿と、
彼女の結婚式の時に見せた輝くような笑顔がずっと忘れられないだろうなあと思った1本です。
監督:ミハル・ボガニム 出演:オルガ・キュリレンコ アンジェイ・ヒラ イリヤ・イオシフォフ ヴャチェスラフ・スランコ セルゲイ・ストレルニコフ ニコラ・ヴァンズィッキ ニキータ・エンシャノフ タチアナ・ラスカゾワ
2011年 フランス/ウクライナ/ポーランド 原題:LA TERRE OUTRAGEE/LAND OF OBLIVION
(20130222)
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公式サイトはこちらへ http://www.kokyouyo.ayapro.ne.jp/