気の強さは天下一品でした~
6歳の少女ハッシュパピー(クヮヴェンジャネ・ウォレス)は自然児そのもののような女の子。
“バスタブ”という低地の地域で川を身近に感じ、野原を駆け回ってペットたちと遊び、
手掴みで肉や魚を元気に食べては満足そうな顔をしています。
そんな少女の父ウィンク(ドワイト・ヘンリー)はボートで魚を獲りながら生計を立てていて、
水を怖がって壁を作った人々が工場を立てて醜くした風景にいつも怒りを込めた視線を向けていました。
ハッシュパピーは父と二人暮らしですけど、住んでいる小屋は別々に独立しています。
朝ごはんは父が丸ごと焼いた鶏肉料理で、父の「エサだぞ」という呼び声と共に自分の小屋を出ては
ペットたちと肉を分け合って食べています。
そして、寝る部屋は別々でも父は少女の信頼を一身に受けていました。
でもある日、父が居なくなりました。朝になってもハッシュパピーを呼んでくれないのです。
その日の授業が終わっても父は教室へ迎えに来ません。
仕方なく一人で歩いて帰った彼女は段々と途方に暮れてきます。
そして、お腹の空いた彼女は猫缶をスープと共になべで煮始めました。
そんな中、病院のガウンを着た父が帰ってきます。病院を脱走して来たようです。
父に会えて嬉しい彼女が見なれない服装のことを聞きながら父にまとわり付くと、
疲れた様子の父は煩そうに少女を追い払い、自分の小屋へ戻ってしまいます。
そんな父の態度に怒りを覚えた彼女は、つい感情に任せて自分の小屋を燃やしてしまいました…
それにしても不思議な物語でした~
大昔に地球を支配していた最強の動物オーロックスが温暖化で甦り、弱者を支配していくという
伝説を聞きながら育ったハッシュパピーは強烈な嵐によって水没したバスタブを見て伝説の再現を感じます。
そして、その脅威に負けない強さを持ってオーロックスの前に立ちふさがります。
その小さいのに強いオーラを感じるような姿がとても印象的でした。
また、日頃から彼女は海の果てで光っている信号のような光の元に母がいると信じて、
父の危機の際に母の救護を求めて海を渡ろうと泳ぎ始めます。
その一途な心は運命のような出会いと共に温かい感情をもたらしてくれますけど、解決にはなりません。
それでも、一瞬の温かさは彼女の心をさらに強くしてくれたように感じました。
どうしようもない天災の中で故郷を失おうとしている彼女たちの、真っ直ぐな心がとても逞しかったです。
観終わった時、これからバスタブのみんなはどうなるのだろうなあと考えてしまった1本です。
監督:ベン・ザイトリン 出演:クヮヴェンジャネ・ウォレス ドワイト・ヘンリー
2012年 アメリカ 原題:BEASTS OF THE SOUTHERN WILD
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公式サイトはこちらへ http://www.bathtub-movie.jp/