山道をリヤカーで60kmとは、どう考えても大変な道のりでした^_^;
平和だった浜松にも空襲が来て、いよいよ山奥へ疎開しなければならなくなった、ある数日の物語です。
木下正吉(加瀬亮)は木下惠介監督として自分の映画を撮るまでに成功していました。
でも、彼の『陸軍』のラストシーンで、出兵する息子を涙ながらに追いかける母の姿を描いたことから
軍に目を付けられてしまいます。
そして、脚本まで進んでいた次作を中止させられたのを機に、辞表を出して浜松の実家へと戻っていました。
実家には脳梗塞で身体が不自由になった母(田中裕子)がいました。
東京にある正吉の家に居て空襲が来た時、倒れてしまったのです。
それきりほぼ寝たきり状態でしたが、実家では家業の店を手伝っている兄(ユースケ・サンタマリア)や
妹たちが面倒を見てくれるので安心でした。
でも、その安心も崩れるときがやって来ます。とうとう浜松も空襲で焼けてしまったのです。
市街地から離れた場所にあった実家は無事でしたけど、店は焼けてしまいました。
そして、もう知り合いを頼って山間にある村に疎開しなければと誰もが思います。
でも、病床にある母にはバスでの旅は無理でした。
そして正吉が出した案は、母をリヤカーで運んでいくというものでした。
それにしても、映画への熱い想いが伝わってくるような作品でした~
自分の希望する映画が撮れないことに絶望した木下監督は、監督を辞めて実家に帰ります。
実家へ戻るきっかけとなった『陸軍』のラストシーンが映し出されると、確かに何ともいえない
母の哀しみが強く伝わってきて、これは軍が嫌がるだろうなあと感じました。
でも、この母の姿は誰が観ても本当の気持ちを語っているのですよね。
それだけに軍にとっては痛いのですけど、市民が観ると涙なくしては観られない胸に残るシーンなのです。
映画の中でも流れるラストシーンは今観ても本当に胸が痛みます。
あの母の表情を丹念に撮り続けることで、どれくらい多くのことを語っているのだろうと考えてしまいました。
また、自分の母への想いも強く感じました。
それほど大変なこととは思っていなかったとは言え、山を越える厳しい道をリヤカーを引きながら
ひたすら登っていく姿には、最後までやり遂げようとする強い気持ちを感じました。
また、そんな正吉とたわいもない言葉を交わしながら、彼の隠された心を動かしていく
旅の相棒・便利屋(濱田岳)の存在感も良かったです。
そして、何と言っても正吉が母の気持ちを知る手紙のシーンには泣かされました。
後半に登場する名作の数々名シーンも楽しかったです。
観終った時、日本映画がますます好きになるような1本です。
監督:原恵一 出演:加瀬亮 田中裕子 ユースケ・サンタマリア 濱田岳 斉木しげる 光石研 濱田マリ 山下リオ 藤村聖子 松岡茉優 相楽樹 宮崎あおい 大杉漣
2013年 日本
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公式サイトはこちらへ http://www.shochiku.co.jp/kinoshita/hajimarinomichi/追伸
この映画は試写会で観ました。公開は6月1日以降の予定です。