トヨさんの人生は明治から平成にかけての日本の時代そのものでした。
風の強い夜から始まる物語です。
柴田トヨ(八千草薫)は外の音が気になっていました。
いつも何か問題があると息子の健一(武田鉄矢)が裏口から訪ねて来ていたのです。
最近、めっきり体力が落ちて歩くのも大変になっていた彼女ですけど、何とか裏口までたどり着きました。
でも、暗い裏口の外には誰もいませんでした。
そして、ガッカリした彼女にベッドまで戻る体力はありません。
そのまま台所の床で動けなくなって一夜を明かし、
次の日、デイサービスの人に発見されるまでそのままでした。
そんな寒い夜を過ごした彼女は風邪をひいて体調を崩してしまいました(T_T)
その日、風邪をひいてしまったトヨの知らせは健一と妻・静子(伊藤蘭)にも届きます。
健一は口では風邪をひくなんて情けないなあとか言いつつ、内心はとても心配していました。
しかも、診察してもらった病院で緑内障が見つかってしまいます。
後日の目の手術は成功したものの、ますます引き篭もりがちになって気落ちした母を気遣った健一は、
偶然に新聞で見つけた記事を読んで、母に詩を書かせようと閃きました。
それにしても、本当に大変な人生を送ってきた人だったのですね。
代表的な詩のいくつかは知っていましたけど、あとはあの柔らかな笑顔の写真しか知りませんでした。
幼い頃は家計を助けるために奉公へ行き、先輩に意地悪されて手に大火傷を負います。
戦時中は寝たきりの父を母と共に助けながら必死に逃げ惑います。
そして、一人息子が育ってからは、そのダメダメさに苦労させられました(T_T)
そんな彼女が語る言葉だからこそ、シンプルな言葉が心に沁みるのだと改めて納得しました。
そして、優しくて強いトヨさんを体現してくれた八千草薫さんやダメ息子を演じた武田鉄矢さん、
そんなダメ旦那を支えるしっかり者の妻を演じた伊藤蘭さんの紡ぎあげる物語に引き込まれていきました。
観終った時、彼女の人生と詩にとてもとても勇気を貰った気がした1本です。
監督:深川栄洋 出演:八千草薫 武田鉄矢 伊藤蘭 檀れい 芦田愛菜 鈴木瑞穂 橋本じゅん 上地雄輔 ピエール瀧
2013年 日本
(20131008)
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この映画は試写会で観ました。公開は11月16日以降の予定です。