そこまで壊れる衝動はどうして生まれたのだろうと思ってしまいました。
梅澤梨花(宮沢りえ)は銀行に勤める真面目な女性です。
その仕事ぶりが評価されてパートから契約社員に昇格し、外回りにも行くようになりました。
彼女が担当するのは、銀行へ出かけてくるのか億劫なお年寄りが中心です。
預金を動かす御用聞きをしつつも、新商品を勧めたりと仕事はなかなか大変でしたが、
彼女の人柄と控えめだけど真面目な熱心さで、顧客の信頼を得ていきました。
そんなある日、お得意様の平林(石橋蓮司)の家で孫の光太(池松壮亮)と挨拶をします。
彼の存在は忘れていた梨花でしたけど、後日、偶然に会社の近くで光太から声をかけられます。
挨拶をして別れて電車に乗った梨花は、同じ車両に乗った光太の視線を感じて戸惑います。
そして、数日後に再び出会った時、彼女は光太に引かれるように彼のもとへと歩み寄りました。
それにしても、これはお金の映画でもあり、恋の映画でもあるのですね。
ただし、梨花は恋に狂うだけでなく、金銭感覚も狂わせていきます。
手元にあるお金は銀行のものなのに、どんどん使い込んでいくのです。
彼女がランクアップした世界にどれくらいの憧れを感じていたかは解りませんけど、
あまりにも普通の人に見えていた彼女の唐突な壊れ方が怖かったです。
あと、時代設定が少し前なこともあって、簡単に横領を計画できてしまう体制が興味深かったです。
結局、仕事というものは人の信頼関係で成り立っていて、人柄が一番出るところかも知れませんね。
私の会社には東京から京都の実家関係へ毎日のように私用電話をしている人がいるのですけど
それがOKという感覚はその人しか持っていません。
数字の架空操作を知った梨花の銀行への理解の仕方も、彼女にしか無い感覚のような気がしました。
そのずれが罪のラインを簡単に超えさせてしまったのだなあと思うと、特殊な常識に怖さを感じました。
原作もテレビドラマも何となく近寄りがたかったのですけど、映画を観てチャレンジしたくなりました。
観終った時、私はやっぱり一緒には行けないよなあと思った1本です。
監督:吉田大八 出演:宮沢りえ 池松壮亮 大島優子 田辺誠一 近藤芳正 石橋蓮司 小林聡美 平祐奈 佐々木勝彦 天光眞弓 中原ひとみ
2014年 日本
(20150201)
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