カプチーノはお熱いうちに ～イタリア映画祭2015より～

「あしたのパスタはアルデンテ」のフェルザン・オズペテク監督の最新作です。
今回は楽しそうなタイトルがついているので、ちょっと可愛い話かなとチャレンジしてみました。
熱い恋から始まる物語は、やっぱり一筋縄では行かない展開でした。

原題は“あなたのシートベルトを締めましょう”で、乱気流が来るから気をつけようという意味でした^_^;

カフェで働くエレナ（カシャ・スムトニャク）はバス停で最悪の男に出会いました。
些細なことで口論を始めた乗客たちに向かって、移民は嫌いだと公言したのです。
怒りを覚えたエレナが反発すると、手を出そうとする始末です。
相手は去りましたが、怒りはなかなか収まりませんでした。

その日はついていないのか、カフェでも仕事に追われてしまいます。
同じカフェで働いている恋多き親友たちが揃って遅刻をしてきたのです。
でも、その親友の恋人を見たエレナはバス停で会った無礼な男だと気付きます。
そして、その男アントニオ（フランチェスコ・アルカ）はカフェでもエレナに愛想の無い態度で去って行きました。

そんなある日、ホームパーティでエレナはアントニオと再会します。
そこでも彼はゲイを嫌う発言をして、エレナの親友で心優しいゲイのファビオ（フィリッポ・シッキターノ）を
傷付けてしまいます。
でも、そんな最悪の男だったアントニオは、自分とは正反対のエレナに近付いていきます。
そして、エレナも最悪の印象だったアントニオに惹かれていく自分を感じていました。

それにしても、やっぱりシンプルな恋の物語ではありませんでした～
物語が13年後に移ると、性格的に正反対の二人は喧嘩が絶えません。
幼い子供たちも諦めムードです。
でも、気軽に受けた検診でエレナの身体に病巣が見つかります。
そこからが監督さんの本当に描きたかった物語の始まりのような気がしました。

この作品は監督さんの親しい夫婦の姿を見て思いついたそうです。
病魔に冒された女性と話した言葉が映画でも登場します。
その言葉のシーンは女性から見たら思わず笑ってしまう、男性から見たらそれが愛だと胸を張るような
ワンシーンかも知れないなと感じました。

作品は時間を越えて美しい海で終わります。
観終わった後、Q&Aで監督さんが言った「希望は未来にもあるけど過去の美しい想いにもある」という言葉に
なるほどなあとちょっと納得した1本です。



監督：フェルザン・オズペテク　出演：カシャ・スムトニャク　フランチェスコ・アルカ　フィリッポ・シッキターノ　フランチェスコ・シャンナ　カロリーナ・クレシェンティーニ　カルラ・シニョーリス　エレナ・ソフィア・リッチ
2013年　イタリア　原題：Allacciate le cinture
（20150501）

→公式サイトはこちらへ　http://www.zaziefilms.com/cappuccino/

追伸
この映画はイタリア映画祭2015で観ました。公開は2015年9月の予定です。

追伸2
今回のイタリア映画祭はあまり時間が無くて、この作品と初日の「レオパルディ」の2本でした。
「レオパルディ」の主人公ジャコモ・レオパルディはイタリアでは必ず教科書で学ぶ詩人＆哲学者だそうですが、
歴史に疎い私には初めて出会った人でした。
所々で登場する彼の詩は内向的でちょっと難しく、厳しい人生を送ったのだなあと思いつつ見ていました。
全体的には美しい印象の残る作品でしたけど、これ以上は書けそうに無いのでとりあえずご報告です(^^ゞ