さまざまな境遇の女性たちの姿が心に残りました。
出だしから、引き回しにされている女性たちの姿から始まる物語です。
女性たちの罪は庶民が楽しむ舞台を上映しただけです。
1840年代の江戸後期では質素倹約が叫ばれ、お上に敵視されていた娯楽を提供すると逮捕されてしまいます。
その様子を見かけた中村信次郎(大泉洋)は思わず批判する口上を述べてしまい、
役人に追われる羽目になってしまいました。
同じ頃、二人の女が東慶寺を目指し始めました。
ひとりは日本橋にある唐物問屋の妾・お吟(満島ひかり)。
そして、もうひとりは鎌倉で鉄練り職人として働いていたじょご(満島ひかり)です。
二人は東慶寺近くで出会い、足を挫いたお吟をじょごが助けて寺へ駆け込みました。
また、二人が追っ手と勘違いした男は中村信次郎です。
寺に入る前に聞き取り調査を行う御用宿の主人の甥だった中村信次郎も江戸に居辛くなって
御用宿の居候になりに来たところでした。
それにしても、さすがは原田眞人監督だけあって、じっくりと観せてくれる作品でした。
主役の3人の存在感が面白いです。
居候になる中村信次郎は医者見習い、戯作者見習いとやること中途半端で頼りないですけど、
気が強く無い分優しくて、いざとなると口八丁で相手を圧倒します。
この役には大泉洋さんしかいないと思える、ぴったりの役ですね(^^ゞ
一方のじょごはとても真面目で仕事好きな女性です。
鉄練りという仕事に誇りを持って生きています。実際のところ、夫よりも腕が良いのです。
でも、自分を見向きもせずに女遊びばかりしている亭主には心が痛むばかりです。
彼女は泣きながらお地蔵様に問いかけ、東慶寺へ向かう決心を固めます。
素朴で真っ直ぐなじょごを演じた戸田恵梨香さんが似合っていて良かったです。
3人の中で一番謎なのがお吟です。
仕事場でも家でも尊敬と愛情を得ている彼女がなぜ東慶寺を目指すのか、最初は分かりません。
でも、彼女の有無を言わせない佇まいは、自分の強い意志を持ってここに来たことが伝わってきます。
やがて彼女の心が分かった時、“あだっぽい”という言葉にとても凛とした美しさを感じました。
また、このお吟を演じた満島ひかりさんの佇まいも素敵でした。
物語だけでなく、映像も音楽も雰囲気がぴったりで、
スクリーン全体から時代の雰囲気がダイレクトに伝わって来ました。
観終った時、ぜひ原作も読まなくちゃと思った1本です。
監督:原田眞人 出演:大泉洋 戸田恵梨香 満島ひかり 内山理名 陽月華 武田真治 山崎一 麿赤兒 キムラ緑子 木場勝己 中村嘉葎雄 樹木希林 堤真一 山崎努
2015年 日本
(20150606)
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