本当は悲劇のはずなのに、何だか可笑しいなあと思ってしまいました~
あるパン屋さんの独白から始まる物語です。
マルタン(ファブリス・ルキーニ)は都会の出版社で働く本好きの会社員でしたけど、
実家のパン屋を継いだのを機にノルマンディーへとやって来ました。
都会の喧騒を離れて、自然の豊かな田舎町でゆったりと過ごすことになると思っていたのですけど
実際には思いがけない出来事が彼の人生を横切ることになりました。
その出来事は、妻の思い出の品を哀しそうな顔で燃やしている隣人と深い関わりがあります。
彼はイギリス人で、新しい環境を求めて美しい妻と共にこの地へやって来ました。
彼の姓はボヴァリー。つまり彼の妻ジェマ(ジェマ・アータートン)は“ボヴァリー夫人”なのです。
青春時代に『ボヴァリー夫人』から衝撃を受けて以来、ずっと愛読書にしているマルタンは
この偶然の一致とジェマの妖艶な美しさに一目で恋に落ちました。
それにしても、不思議な雰囲気の物語でした~
フランスが舞台でフランス人の監督さんが創った作品ですけど、原作はイギリスのグラフィックノベルです。
そのためか、ノルマンディーに馴染みが無くフランス語も話せないジェマが
この地で出会う様々なことへの新鮮な驚きがダイレクトに伝わってきます。
観ている方もマルタンの視点を通して語られるジェマに親近感を持つようになってきます。
マルタンはジェマへの恋を実らそうとする訳ではありません。
最初のうちは自主的な行動はせず、彼女の姿をじっと目で追うだけです。
そして、後半は彼女のために良かれと考え、思い切った行動をとっていくようになります。
そんなマルタンを演じるファブリス・ルキーニの真剣だからこそ可笑しさを感じる演技と
ジェマ・アータートン演じるジェマの、自分らしさを大切にする強さと魅力的な美しさに最後まで引き込まれました。
ラストまで何故かくすりと笑わせてくれる作品でした。
観終った時、愛され過ぎる女性ってちょっと可哀想だなあと思ってしまった1本です。
監督:アンヌ・フォンテーヌ 出演:ファブリス・ルキーニ ジェマ・アータートン ジェイソン・フレミング ニール・シュナイダー
2014年 フランス 原題:Gemma Bovery
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公式サイトはこちらへ http://www.boverytopanya.com/追伸
この映画はフランス映画祭2015で観ました。
ティーチインの時、次はぜひファブリス・ルキーニさんを連れてきてくださいと言われた監督さんの答えは
ファブリス・ルキーニは飛行機に乗らないのというものでした。
そして、変わり者のファブリス・ルキーニだからねと笑って言っていたのが印象的でした。