ハーモニー

2009年に他界した伊藤計劃著のSF小説を映画化するプロジェクト第2弾です。
これは原作を読んでいたので、どんな映画になるのだろうと気になっていました。
かなり原作に沿ったつくりで、可愛い絵に彩られた怖い世界がスクリーンに広がっていました。

原作通りなのに、何だかちょっと妖しい感じもしました^_^;

戦争と未知のウィルスにより秩序が崩壊した「大災禍」の後の世界では、高度な医療社会となりました。
人間には身体の状況を監視するチップが埋め込まれ、健康状態が常にモニターされています。
また、個人情報は常に公表され、他人の悲しみも自分のもののように共感するような
究極の健康・福祉社会が作られました。

そんな社会を保つために監視する螺旋監察事務局の上級監察官・霧慧トァン（沢城みゆき）は
禁止されていた飲酒＆喫煙が上司にばれて出身国の日本へ強制送還されてしまいます。
謹慎処分中の彼女は、久々の日本で学生時代の親友・下堂キアン（洲崎綾零）と再会しました。
ところが、二人がランチを取っていた時、突然にキアンが手にしていたナイフで自殺してしまいます。

その時、同じように自殺をした人は世界中に発生していました。
目の前で親友を失ったトァンは謹慎中の身ながら、真相の解明に動き始めます。
自殺直前のキアンの様子を観ていた彼女は、
学生時代に自殺したもう一人の親友・御冷ミァハ（上田麗奈）の影を感じたのです。
そして、ミァハの両親を訪ねたトァンは、ミァハの隠された恐ろしい過去へと近付いていきました。

それにしても、改めて考えても恐い世界ですね。
全てが他人に管理され、他人の共感に包まれている世界。
そんな世界に違和感を抱いてしまったのがミァハであり、ミァハに共感してしたのが学生時代のトァンです。
トァンは半分諦めつつも、大人になった今でも世界への違和感をずっと持っていました。

そんなトァンがたどり着いたミァハの過去は本当に酷いものでした(T_T)

戦争と欲望の狂気の犠牲がどれほど無垢な魂を傷付けるのかを改めて考えさせられました。
また、人の死は拭いきれない復讐心をもたらすものなのだとしみじみと感じました。
観終った時、この映画を原作を知らずに観た人はどんな感想を抱くのかなあと思った1本です。



監督：なかむらたかし　マイケル・アリアス　声の出演：沢城みゆき　上田麗奈　洲崎綾零　榊原良子　大塚明夫　三木眞一郎　チョー　森田順平
2015年　日本
（20151114）

→公式サイトはこちらへ　http://project-itoh.com/