ミシェル・ウィリアムズとマティアス・スーナールツの繊細な演技に魅せられました。
ある日のアンジェリエ家の風景から始まる物語です。
夫が出征中の妻リュシル(ミシェル・ウィリアムズ)は義母(クリスティン・スコット・トーマス)と共に
アンジェリエ家の暮らしを守りながら日々を過ごしていました。
義母のアンジェリエ夫人はリュシルに好きなピアノも弾かせず、小作人の集金に同行させます。
リュシルは義母のアンジェリエ家風の躾や厳しい取り立てのやり方に馴染めないままでしたが、
不満は心の中にしまいこんで、大人しく従っていました。
今の状況に馴染めないのは夫人も同様でした。
夫人は現在のフランスの状況が理解できず、戦争が間近まで近付いていると認識できていません。
パリが陥落して辺りには避難民が押し寄せてきているのに、その日も集金へ向かおうとしていました。
でも、避難民の列へ向かって近付いて来たナチスの戦闘機が爆弾を落とし始めます。
あたり一面で爆発が起き、リュシルとアンジェリエ夫人は急いで家へ逃げ帰るしかありませんでした。
そして、とうとうナチス軍の中尉が逗留のためにアンジェリエ家にやってきました。
それにしても、何故か美しい余韻を感じる作品でした。
中心にあるのが美しいメロディのピアノ曲と実らぬ恋だったからかも知れません。
今は亡き父の決めた結婚により、心を抑えなければならない日々を送っているリュシル。
そんな彼女の前に現れたのはナチス軍のブルーノ中尉(マティアス・スーナールツ)です。
毎晩、ピアノに向かって美しい曲を奏でる彼に、リュシルは密かに惹かれていきました。
でも、町中がナチス軍に統治され、隣人が痛めつけられているという状況では、
そんな恋など実るはずもありません。
そして、ある事件をきっかけにリュシルは大きく変わり始めます。
気弱で可憐なだけな存在だった彼女が少しずつ意志を持って行動し始める展開が興味深かったです。
また、ナチス軍の中尉なのに心優しさと音楽の美しさを忘れず、
リュシルへの恋を募らせながらも彼女を大切にしようとするブルーノ中尉の存在感も印象的でした。
そして、何と言ってもミシェル・ウィリアムズとマティアス・スーナールツの美しい演技が心に残りました。
観終わった時、映画の余韻を感じながら、60年前にこの物語を書き続けたイレーヌ・ネミロフスキーの心は
どんなだったのだろうなあと想いを巡らせてしまった1本です。
監督:ソウル・ディブ 出演:ミシェル・ウィリアムズ マティアス・スーナールツ クリスティン・スコット・トーマス サム・ライリー ルース・ウィルソン マーゴット・ロビー ランベール・ウィルソン トム・シリング
2014年 イギリス/フランス/ベルギー 原題:SUITE FRANCAISE
(20160111)
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