先日のカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した是枝裕和監督の最新作です。
予告編を観て、万引きをしなくては生きていけない家族とは、どういった家族だろうと気になっていました。
相変わらず答えは出さずに観客に考えさせる展開に、今回も深く考えさせられてしまいました。
祖母の年金を頼りに、都会の片隅にある家に集まった家族。
父(リリー・フランキー)、母(安藤サクラ)、母の妹(松岡茉優)、幼い息子(城桧吏)という一家は、
それぞれ働いてはいますけど家族がちゃんと暮らせるほどではありません。
足りない生活費は、父と息子のコンビで行う万引きで補っていました。
ある日、父と息子が万引きを終えてスーパーからの帰宅中に、独りで遊んでいる少女を見つけます。
寒いさなかに外で独り遊びをしている少女が気になった父は、コロッケをきっかけに声を掛けると
家へ連れ帰ります。
そして、寒さや家庭環境の悪さに帰る機会を逸した少女は、やがてこの家族の一員となっていきました。
それにしても、人間は怖いと感じる作品でした。
人は状況によって様々な顔を見せる生き物です。
寒い中、家へ帰れずにひもじい思いをしている幼い女の子には無条件で手を差し伸べる反面、
子供に教えられるのは万引きだけという父。
子供たちに優しく接している反面、夫の再婚相手の息子夫婦に定期的に金を無心し、
金が手に入るとパチスロへいく祖母。
愛情を持って家族に接している反面、いざとなったら遺体を埋めるという決断を即座にする母。
一面では本当に情が深くて温かみを感じさせる人々なのに、ふとした瞬間に見せる姿にぞっとしました。
そして、正しいだけでは生きられない現実を清濁合わせて生き抜こうとする家族の現実に圧倒されました。
人は誰でも笑顔で生活していきたい。
でも、それを許されない現実の中にいる家族がある。
そんな家族のことを忘れてはいけないなと観終ってから、つらつらと考えてしまった1本です。
監督:是枝裕和 出演:リリー・フランキー 安藤サクラ 松岡茉優 城桧吏 佐々木みゆ 柄本明 樹木希林
2018年 日本
(20180602)
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