料理が好きで飲食店の厨房で働いている芙美(蒼井優)はいつか自分のカフェを開くという夢を持っています。
同棲中の恋人は小説家になる夢を持っていましたけど、その夢を諦めて実家の農業を継ぐことになりました。
先に自分の道を決めた彼と最後の会話をしながら、芙美は自分の将来に漠然とした不安を覚えます。
でも、まだ自分の店を持つという夢は捨てられずにいました。
芙美の姉の麻里(竹内結子)は海洋生物学者の夫(北村有起哉)と共にアメリカで暮らしていました。
彼女は英語が苦手でアメリカでは上手くコミュニケーションがとれません。
小学生の息子はすっかり学校に慣れていて、英語の独り言が出るほどです。
でも、麻里は息子の言葉を理解できなくなる不安から、「家では日本語で!」と怒ってしまいます。
家庭内にも居場所を無くしそうな麻里は、苦悩に頭を抱えるしかありませんでした。
そんな娘二人に母から、今年の父の誕生日には必ず実家へ戻ってくるようにと連絡が入ります。
アメリカ暮らしの麻里も東京で一人暮らしの芙美も実家とは縁遠くなっていました。
お誕生日のお祝いの料理を食卓へ並べた二人は、何となく父の様子がおかしいことに気付きます。
そしてその夜、母は父が認知症を患い始めていることを娘二人に伝えました。
それにしても、とてもリアルで身近に感じる物語でした。
高齢の父のいる家族を、姉妹と父を支える母、3人の女性の姿を中心に描いています。
夢や恋に破れ続ける妹のストーリーも、なかなか心が通じ合わない夫や息子に悩む姉ストーリーも、
共感しながら観ていました。
どちらの女性も自分の生き様に悩み苦しみながら日々を過ごしていて、
それでも何とか前へ向いて行こうとする姿が切なかったです。
そんな中、次第に記憶を無くしていく父に寄り添いながら支えていく母の姿には強さを感じました。
大人しくて真面目な彼女にとっては夫と暮らしていくことこそが一番大切なことです。
認知症が進行して次第に自分だけでは夫を制御できなくなってきていても、一人で頑張ります。
その様子には大人しそうな見かけよりもしっかりした芯の強さと大きな愛を感じました。
ゆっくりと記憶を無くしていく父に、家族への愛を感じられるシーンには思わずほろりとさせられました。
観終った時、哀しみよりも愛の温かさが心に残った1本です。
監督:中野量太 出演:蒼井優 竹内結子 松原智恵子 山崎努 北村有起哉 中村倫也 杉田雷麟 蒲田優惟人
2019年 日本
(20190522)
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