どんなに働いても豊かになれないワーキンプアの労働者一家の姿を描いた物語です。
とてもケン・ローチ監督らしい作品でした。
元々は建築業で働いていたお父さんでしたけど、不況のせいで仕事が少なくなり、
ついに転職しようと決意したことから物語は始まります。
でも、その仕事がフランチャイズの宅配ドライバーだったことが不幸の始まりでした。
ある意味、保証のない一日契約の契約社員みたいなものです。
働いただけ金になると言われ、彼は過剰な配達物を抱えて一日14時間、週6日働き続けます。
でも、この業務に就くためには自前で自動車を購入するなどの準備が必要だったため、
まずは抱えてしまった借金を返さなくてはなりません。借金に追われる毎日なのです。
働く時間は自由なのかと言えば、仕事量からみると食事もろくに取れないほどで
自由に時間を使える状況ではありません。
しかも、自由に休暇をとることも出来ません。
営業所を営む契約の元締めから、休暇をとるなら代理の人をよこせと言われてしまうからです。
本当に労働者としては最悪の環境に身を置くことになっていました。
彼の妻はパートタイムの訪問介護士をしていて、やはりオーバーワークの状況です。
しかも、夫の仕事用の車を購入するためには彼女の車を売るしかなく、バスで各家庭を回る羽目に…
夫の仕事のために妻の職場環境も悪化してしまいました。
二人が必死に働いている反面、両親が不在がちの家では反抗期の年頃の長男が荒れ始めます。
子どもたちと心を通じ合わせる時間も取れず、お互いの心のすれ違いから家庭は崩壊の危機に陥ります。
お父さんは安定した生活を支えるような豊かさを求めただけなのです。
その結果としてはあまりにも悲しい状況に、ため息しか出ませんでした。
観終わった時、バーゲンが始まったと浮かれている現状がちょっと怖くなりました。
年の初めに心を引き締めるにはぴったりの映画だったなあとしみじみと思った1本です。
監督:ケン・ローチ 出演:クリス・ヒッチェン デビー・ハニーウッド リス・ストーン ケイティ・プロクター ロス・ブリュースター
2019年 イギリス 原題:SORRY WE MISSED YOU
(20200102)
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