ある朝、お弁当を作り終わった小巻(小西真奈美)は娘のんちゃん(佐々木りお)の手を引いて家を出た。
行き先は幼稚園ではなく小巻の実家。
小説家を目指すと言いながら親のすねをかじって暮らしているダメ亭主(岡田義徳)に見切りをつけ
離婚しようと決心したのだ。
小巻の行動に気付いたダメ亭主は自転車で必死に電車を追いかけるが、小巻の決心は変わらなかった。
実家に帰った夜、小巻は母(倍賞美津子)にこれからのことを聞かれる。
だが困ったことに、専業主婦だった彼女には仕事のスキルも貯金もなかった…
少しずつ現実の厳しさに気付きながらも、めげることなく前進して行く小巻の姿から
彼女のバイタリティーの強さが伝わってきました。
ダメ亭主に嫌気がさしてとうとう自活を目指そうと決心した小巻。
でも、彼女自身も手に職がある訳ではなく、就職活動は困難を極めます。
なにせこの不況な時代に31歳の子持ちでバツイチの女性の働ける場所を見つけるのは大変です。
とりあえず水商売と思っても、想像以上の現実に付いて行けず、即座に辞めてしまいます。
そんなジタバタしている彼女が偶然に出会ったのが、
“ととや”の主人・戸谷(岸部一徳)の作ったとても美味しい鯖の味噌煮でした。
実は小巻は料理がとても上手く、彼女の作るお弁当は誰もが美味しいと褒めてくれます。
戸谷の料理と巡り合った彼女は、やがて弁当屋を開くことを思いつきます。
ただし、仕事を持って自立していくということは、それだけどこかにしわ寄せが来るものです。
新しい人生を始めるには喪うものがあると諭す戸谷の前でも、小巻の表情は変わりません。
責任とは何か。覚悟とは何か。
彼女が自分の道へと突進していく中で、戸谷は彼女にその心を問い質します。
そして、戸谷の厳しい言葉にさらされながら、彼女は一歩一歩強くなっていきました。
小巻の人生は 思いつく→頑張る→成功する という簡単な物語にはなりません。
現実はそれほど甘く無いし、だからこそ小巻は現実を知らなければならないのです。
また、世間知らずの小巻も、実は自分の置かれている現実や自分の弱さをかなり理解しています。
その上で、自分の夢に突き進もうとするのです。
その強さはちょっと羨ましいなあと思いました。
小巻に現実を教えつつも、時には諭すように語り掛ける戸谷の厳しさと優しさは
彼女の頑張りと共にとても印象に残りました。
人が自分の人生を見つけていくことは簡単なことではないのだなあと改めて感じた1本です。
監督:緒方明 出演:小西真奈美 岡田義徳 村上淳 佐々木りお 岸部一徳 倍賞美津子
2009年 日本
(20090914)
追伸
この映画は試写会で観ました。公開は9月26日以降の予定です。