マーラー(ヨハネス・ジルバーシュナイダー)は汽車に揺られながら、ある町へと急いでいた。
そこには精神分析を専門とする学者フロイト(カール・マルコヴィクス)が待っているのだ。
ようやくフロイトの待つホテルへ着いたマーラーだったが、フロイトが分析を始めようとすると逃げ出してしまう。
これまでも何度かキャンセルされていたフロイトが怒ってマーラーを追いかけると、
彼は外で話したいと言って歩き始めてしまった。
しかたなくマーラーに付いて行ったフロイトは、彼と妻アルマ(バルバラ・ロマーナー)の愛の話に
次第に引き込まれていった…
正直、芸術家の夫婦の愛は難しいな思いながら観ていました。
宮廷歌劇場音楽監督であり作曲家でもあるマーラーは、芸術家たちの集まっていたサロンで
美貌を誇る音楽家のアルマに恋をします。
二人の歳の差は19歳もあって、それでもお互いに惹かれていきます。
マーラーは彼女の輝くような笑顔に。
アルマはマーラーの持つ音楽家としての才能に。
アルマとしてはマーラーが彼女にとっての音楽の理想だったのかも知れません。
人生の中で一番大切な“作曲”という才能を高く引き出してくれるような男性と感じたのだと思います。
でも、アルマの作曲家としての才能はマーラーによって結婚前に否定されてしまいます。
その絶望は深かったと思うのです。
それでもアルマはマーラーと結婚します。その心境は本人にしか分からないのかも知れません。
だって、自分の人生の目的が否定されたようなものなのです。
また、マーラーは音楽以外のことには鈍感で、自分がアルマを絶望に追い込んでいるとは気付きもしません。
でも、フロイトの解析により、自分がアルマにどんなことをして来たのかを理解します。
そして、今の彼に出来ることはアルマを思って曲を創り続けることだけでした。
それにしても、二人の愛は複雑ですね。
結局、二人とも音楽を一番に思っていることが根底にあります。
それは観ている者にも分かりますけど、最初から厳しい結婚だっただけに、
特にアルマにとっては幸せな結婚だったとは言えなかったでしょう。
それでも、曲のためにマーラーのもとを去らなかったアルマは
やはり音楽を愛する芸術家ならではの選択だったのだなと感じました。
観始めた時は、マーラーって鈍感でひどい人だなと思ってしまったのですけど、
最後まで観ていると、この二人の出会いと結婚も運命だったのだなと感じました。
いつかこの二人から生まれた名曲たちを、じっくりと聞いてみたいなと思った1本です。
監督:パーシー・アドロン フェリックス・アドロン 出演:ヨハネス・ジルバーシュナイダー バルバラ・ロマーナー カール・マルコヴィクス エヴァ・マッテス フリードリヒ・ミュッケ マヌエル・ヴィティンク マティアス・シュタイン
2010年 ドイツ/オーストリア 原題:MAHLER AUF DER COUCH/MAHLER ON THE COUCH
(20110430)
→公式サイトはこちらへ http://www.cetera.co.jp/mahler/