せめて、この復讐の連鎖を子供たちには繋げたくないという願いを感じました。
内戦状態のアフリカとデンマークの小さな港町を舞台に、
暴力のもたらすものは何かを考えさせられるような物語です。
アフリカのキャンプに派遣されているフィンランド人の医師アントン(ミカエル・ペルスブラント)は
腹部に切り傷を負い、瀕死の状態で担ぎ込まれてくる女性たちに出会います。
そしてアントンは異常な精神と暴力で人々を恐怖に陥れている男の存在を知ります。
自分の悦楽のために他人を殺す暴力の存在に無力さを感じながらも、
彼は必死に治療をしていくしかありませんでした。
一方、アントンの家族はデンマークで暮らしています。
妻マリアン(トリーヌ・ディルホム)は病院で働く医師で、二人の息子を育てています。
息子のうち長男のエリアス(マークス・リーゴード)はいじめの対象になっています。
ある日、ロンドンから祖母のいるこの街へ引っ越してきたクリスチャン(ヴィリアム・ユンク・ニールセン)は
エリアスが校門前で虐められているところを見かけます。
クリスチャンは鋭い目つきで、グループのボス格の男子をじっとみつめていました。
二つの土地で繰り広げられる暴力と憎しみの連鎖は、その大きさと残酷さはともかくとして
暴力というものがどれほど人の心を傷つけていくのかを実感させてくれます。
良識を持つアントンが暴力の対処方法を子供たちに提示しますけど、
暴力の怖さを知っている子供たちには、その方法や考え方が納得できません。
そして、子供たちの決意がまたひとつの悲劇へと繋がろうとしていました。
それにしてもこういう作品を観ると、人間の不確かさと柔軟に成長していく心を実感させられます。
小さな子供の頃、大人は完璧で絶対的なものだと思っていたのですけど、
大人になってみると大人もまた不完全で間違いが多い人間なのだと理解します。
それでも大人であることはやはり子供の手本とならなければならないのですよね。
そして子供も、大人が間違う人間であることを少しずつ理解していきながら、
それ以上に大切な繋がりや気持ちがあると知って成長していくのだなと思います。
この作品は、そんなことをつらつらと考えていた10代の頃の気持ちを思い起こさせてくれました。
こういう作品を子供の頃に観ていたら、衝撃だったろうなと感じました。
出来たら多くの子供たちに観て欲しいなと思った1本です。
監督:スサンネ・ビア 出演:ミカエル・パーシュブラント トリーヌ・ディルホム ウルリク・トムセン マルクス・リゴード ウィリアム・ヨンク・ユエルス・ニルセン
2010年 デンマーク/スウェーデン 原題:HAEVNEN/IN A BETTER WORLD
(20110814)
→
公式サイトはこちらへ http://www.mirai-ikiru.jp/