坂口恭平著の原作を基にホームレスの生活と社会の関わりを描いたドラマです。
予告編を観て、あの堤幸彦監督が描くホームレスの物語とはどんなものなのか気になっていました。
あまりのリアルさにドキュメンタリーを観ているような感覚に陥りそうな作品でした。
空き缶の流れで社会が映し出されていました。
名古屋を舞台にホームレスの生活を描いた作品です。
主人公は鈴木さん(いとうたかお)。物語は彼が公園の片隅に家を作ろうとするところから始まります。
途中で分かるのですけど、1か月ごとに移動しないといけないらしいのです。
リアカーに角材など全ての材料を積んで移動してきた鈴木さんは、実に手際よく家を作り始めます。
土台から始まり、壁を組み立てて屋根にビニールをかぶせ、最後にはバッテリーで電気も通します。
彼はここにスミちゃん(石田えり)と一緒に住んでいました。
近所には馴染みの仲間もいますけど、鈴木さんの行動は基本的にひとりです。
自転車で空き缶を集めたり、生活に役立ちそうなものを拾ってきます。
海の幸とか山の幸という言葉のように、鈴木さんにとってその行為は街の幸を集めることです。
そんな生活は一見、穏やかで気楽に見えるのですけど、実情はそんなに甘いものではありませんでした(T_T)
それにしても、リアルでした。
自転車に乗って街をゆっくりと走っている鈴木さんの姿には静けさを感じます。
でも、通行する車の量が多い道路を走っている彼の姿には、別の次元に居る人のような違和感や
危うさをも感じてしまいました。
でも、そんな鈴木さんがじっと立っていると寂しげで、つい言葉をかけたくもなります。
自分の家の前にいる鈴木さんを見た小学生の女の子が、1度目はぎょっとして迂回しながら歩いていたのですけど、
2度目には空き缶を入れた袋を手渡す気持ちが分かった気がしました。
そして、鈴木さんたちの生活と対照的に描かれている潔癖症の一家の歪みがとても怖く感じられました。
観終わってすぐに答えが出るような物語ではありませんでしたけど、何だか考えさせられてしまいました。
ホームレスの人にもいろいろいるのだなあと改めて感じた1本です。
監督:堤幸彦 出演:いとうたかお 石田えり 村田勘 佃典彦 佃明彦 多田木亮佑 木村多江 板尾創路
2012年 日本
(20120530)
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公式サイトはこちらへ http://myhouse-movie.com/