運命に翻弄される二人の息子の素直さに救われた気がしました。
18年前に起きた手違いにより入れ違っていたことが発覚した二つの家族の物語です。
イスラエルで暮らすヨセフ(ジュール・シトリュク)は空軍大佐の父アロン(パスカル・エルベ)と
医者の母オリット(エマニュエル・ドゥヴォス)を持つ18歳の男の子。
イスラエルでは18歳になると兵役があるため、ヨセフも友人たちと共に健康診断を受けました。
でも、その結果を見た母オリットは、血液検査で判った血液型が自分と夫の子供ではありえない型だ
と言うことに気付きます。
そして、夫に内緒で出産時に何が起きたのかを調べ始めました。
調査の結果、湾岸戦争の勃発で混乱した最中の病院で産まれたオリットの息子が
ちょうど同じ時に出産をしたパレスチナ人の男子と手違いにより入れ替わっていたことが判明します。
病院からの説明を受けたオリットとアロンはショックを欠かせません。
一緒に病院から呼ばれていたパレスチナ人夫婦も途方に暮れるばかりです。
でも、お互いに息子の写真を見せ合うと、二人の母はその事実を受け入れなければと思い始めます。
どう見ても写真の息子たちは自分たちに似ているのです。
それでも父たちは事実を認めたがらず、息子にも知らせるなというばかりでした(T_T)
それにしても、考えさせられる物語でした。
お互いに戦争をしていて憎しみ合っている国の家族なのです。
父たちはこれまで愛してきた息子に流れている血が敵の民族のものと思うと、
どう受け止めていいか判らずに距離を置いてしまいます。
また、事実を知らされたヨセフとパレスチナ人夫婦の次男ヤシン(マハディ・ダハビ)も
どう対処したら良いか判らなくて混乱してしまいます。
自分たちのアイデンティティが根本から揺らいでしまったのです。
特にパレスチナ一家では兄の拒否反応が強かったです。
事実を知らされた兄は弟に対して、お前はイスラエル人だから敵だと憎しみをあらわにし始めます。
それまでは本当に仲の良かった兄弟の絆が突然に壊れてしまいます。
まるで、この二つの国の関係の難しさを象徴しているようでした。
でも、二人の息子はお互いに大変だねと言って、シンパシーを感じながら仲良くなっていきます。
これは運命だから仕方ないし、自分は自分だから事実を知っても何かを無理に変えることは出来ないと
柔軟に受け入れていくのです。
そして、二人がお互いの国を行き来し始めて本当の家族と出会った時、
それぞれの家族の心も少しずつ変化していきました。
例えそれぞれの家族が理解し合えても、それだけでは解決できない問題が多くあることも
物語の中では語られています。
これだけ厳しい歴史的背景があっては、それも仕方が無いことかも知れません。
それでも、この二人のように柔軟な心が未来を変えて行けるといいなと願ってしまった1本です。
監督:ロレーヌ・レヴィ 出演:エマニュエル・ドゥヴォス パスカル・エルベ ジュール・シトリュク マハディ・ダハビ アリン・オマリ カリファ・ナトゥール
2012年 フランス 原題:The Other Son/Le fils de l'Autre
(20121026)
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公式サイトはこちらへ http://www.moviola.jp/son/追伸
この映画は東京国際映画祭で観ました。公開は2013年10月19日以降の予定です。