パアトは大きくて賢くて優しい犬でした。
パアトの飼い主が悲劇に見舞われるところから始まる物語です。
パアトは大型犬で見かけは怖そうですけど利口な犬で、いつも独り暮らしのご主人と一緒に過ごしていました。
でも、そのご主人が殺されてしまいます。
女性にあなたから病気を移されたと恨まれ、刺されてしまったのです。
助けもないまま、間も無くご主人は息を引き取ってしまいます。
その日からパアトは一人ぼっちになってしまいました。
むやみに道をのんびり歩いたりすると、銃を持った野犬狩りの作業員に捕獲されてしまいます。
仕方なくパアトは人目の少ない裏道を歩いて、自分の居場所を探し始めます。
でも、餌もくれる人はいませんし、美味しそうな匂いに近寄ると追い払われてしまいます。
街の人はみんな、犬を不浄なものと考えているのです。
そんな旅の中でも、哀しい想いを抱いている人と出会うと、彼らはパアトに話しかけてくれます。
パアトもそんな人々に心を寄せていきましたが、その出会いはどれも短い間のものでした。
それにしても、パアトが出会う人々はみな辛い人生を歩んでいる社会の弱者たちばかりでした。
金持ちで家庭のある男性の愛人となり、援助を受けて学校へ通っていて妊娠してしまった女性。
彼女は男性に子供の処置を強いられてしまいます。
そして、貧しさのためにそういう道を歩んでいた彼女は、このままではいけないと思い始めました。
また、あるシングルマザーの女性は働いていても食べていくのがやっとな状態だったところに
大切な子供が重い病気を患ってしまいます。
治療のために何とかお金を作らなくてはならないと考えた彼女は友達に相談します。
そして、教えてもらった方法は自分の身を削るような究極のものでした。
そんな人々の間を通り過ぎながら、このパアトは何を感じているのだろうかと考えながら
静かにスクリーンを見つめていました。
観終った時、最後まで佇んでいたパアトの姿が心に残った1本です。
監督:アミル・トゥーデルスタ 出演:モスタファ・ササニ サイード・ソヘイリ ソニヤ・サンジャリ ネガル・ハサンザデ ジャムシド・ヌリ マンダナ・ノスラティ ファヒメ・ダッバギ ババク・ハミディファルド
2013年 イラン 原題:PAAT
(20131022)
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東京国際映画祭のサイトはこちらへ http://tiff.yahoo.co.jp/2013/jp/lineup/works.php?id=A0002追伸
この映画は東京国際映画祭で観ました。公開予定は未定です。