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ぐるりのこと。 [か行]

一組の夫婦の10年間を描いた作品です。
山あり谷ありの人生を淡々と映し出していく中で、
二人の心の動きが自然に伝わってくるような物語になっていました。

しっかり者の翔子(木村多江)と女癖が悪くいつも頼りないカナオ(リリー・フランキー)は
長年付き合ってきたが、翔子の妊娠をきっかけに結婚した。
特に挙式をあげることも無く始めた夫婦生活も、これから生まれてくる子供のことを考えると
幸せな人生の始まりだった。
しかし、待望の赤ちゃんは生まれて間も無く亡くなってしまう。
その哀しみのため、翔子の心は段々と病んでいってしまった…

ごく普通の生活を送っていた妻の心の崩壊と再生が静かな視線で描かれていました。

何事も計画通りに進まないとイライラしてしまう翔子。
仕事が長続きしない上に女好きで、翔子との約束もつい忘れてしまうようなカナオ。
こんな全く性格の違う二人なのにとても仲の良くて幸せいっぱいの夫婦に
突然、子供の死という不幸が起きてしまいます。

この死は二人の心に変化をもたらします。
先輩の紹介で靴の修理屋から“法廷画家”へと転職したカナオは
さまざまな犯罪者の横顔を見るようになります。
彼らの顔や言葉だけでなく仕草や印象を見つめていくうちに、彼らから多くのものを感じるようになります。
しかし彼は心の中に変化を留めておいて、あまり表には出しません。
もともとシャイなところがあるカナオは、感情や言葉を表に出さないタイプなのです。

反面、几帳面でしっかり者だけど脆いところもある翔子は、子供を亡くしてしまったショックから立ち直れず、
壊れた心が少しずつ行動に現れるようになってきます。
なんとかこれまでのように頑張ろうとしますが、それが一層自分を追い詰めてしまいます。
そして、全てが少しずつ少しずつ手に付かなくなってきます…
彼女が会社員として勤めているごく普通の人なだけに、その心の痛みもよく理解できて
見ていて辛いほどでした。

そんな妻の様子をカナオは寄り添って静かに見つめています。
初めは何にもしないで、なんとも頼りないなあと思いながら観ていたのですけど、
妻の様子から目をそらす訳でも、妻のことを忘れる訳でもなく、きちんと見つめている…
それは実はもの凄いエネルギーの要ることかもしれないと感じました。

そんな二人がたどり着いた時間が絵となって表れてくるシーンに感動しながら
こんな境地になれたらなあとしみじみ思った1本です。

hitsuji_gururinokoto.jpg

監督:橋口亮輔 出演:木村多江 リリー・フランキー
2008年 日本
(080520)

追伸
この映画は試写会で観ました。公開は6月7日以降の予定です。

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コメント 5

non_0101

xml_xslさんへ
こんばんは。niceをありがとうございました!
by non_0101 (2008-05-25 00:51) 

江戸うっどスキー

リリー・フランキーさんがどんな演技を見せてくれるのか?期待と不安が入り混じりですが、良さそうですね。
by 江戸うっどスキー (2008-05-25 20:40) 

non_0101

江戸うっどスキーさんへ
こんばんは。nice&コメントをありがとうございました!
かなり胸に来る作品でした~
リリー・フランキーさんは良かったですよ(^^)
まるでドキュメンタリーのような自然さで、カナオそのものになってました!
by non_0101 (2008-05-25 21:29) 

たいちさん

夫婦の有り方を考えさせられる映画のようですね。夫婦で観ると、きっといいでしょうね。リリー・フランキーさんは好評のようですね。
by たいちさん (2008-05-26 13:31) 

non_0101

たいちさんへ
こんばんは。nice&コメントをありがとうございました!
翔子が壊れていくシーンは観ていてかなり辛いですけど、
夫婦で観ると、観終わった後に語り合いたくなる作品かなと思いました☆
by non_0101 (2008-05-27 00:02) 

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