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メゾン ある娼館の記憶 [ま行]

20世紀初頭のパリを舞台に高級娼館で働く女性たちの姿を描いた作品です。
絵画のように美しく気だるそうな雰囲気の場面写真に惹かれてチャレンジしてみました。
美しさの裏側にある廃退と狂気の空気にぞっとしながらも、スクリーンから目が離せませんでした。

あまりにも美しくて哀しくて、ちょっと怖い印象の残る物語でした。

厳選された上流階級の客だけが集う高級娼館。
そこでは若い女性たちが毎夜男たちを相手にするためにだけに集団で生活していました。
昼間は数人で1つのベッドに眠り、夕方にかけて起き出すと次第に仕度をし始めます。
気だるそうな彼女たちは楽しくおしゃべりをしながら高級なドレスに身を包んでいきます。
そして、美しく着飾り終えた彼女たちはサロンで男たちを待ち構えつつ
酒とおしゃべりを楽しみながら、今夜の相手を探していきます。

それは男たちも同様です。
高級娼館に来られるようなブルジョア層の男たちが、マダムの案内によりサロンへ通されます。
そこで女性たちを物色し、相手が気に入ったら二人で部屋へ向かいます。
面白いのは男たちも何となく顔見知りなことです。
何となく仲間同士で悪い遊びを楽しんでいるという雰囲気もあるのが微妙に不気味に感じました^_^;

物語の途中では、一人の少女が親の承諾を得ていると主張して娼館に雇われに来ました。
10代の初々しい少女です。
他の女性たちは借金と共にここへ来ているのですけど、この少女は借金ではなくて自分の意思です。
パリで名高い高級娼館は、内実を知らない田舎の少女にとっては
美しい服が着られる憧れの場所だったようです。

でも、やがて少女はここでは自由の無い生活しかできないと悟ります。
同伴者という監視の目が無ければ、外出も出来ないのです。
どんなに客筋が良いとは言っても、病気を移される娼婦も出てきます。
そして、時には狂気に取り付かれた客に傷付けられてしまうこともあるのです。
いつしか輝かしい夢は消え去り、少女は無言で娼館を出て行きます。
そして時を同じくして、娼館自体も不況の波に飲み込まれていきました。

それにしても、狂気と美しさに彩られた娼館の世界は何とも言い難いものがありますね。
それだけに儚い美しさを醸し出している女優たちには引き付けられました。
昼間の疲れ果てた姿と、夜のほの暗くて気だるい雰囲気の中で哀しげに輝いている姿。
その時代に取り残されたような彼女たちの美しさは名画のように印象に残りました。

娼館が無くなった時代の彼女たちを暗示するラストシーンに考えさせられました。
観終わった時、娼婦たちはそれぞれどんな人生を送るのだろうなと想いをめぐらせた1本です。

hitsuji_House-of-Tolerance.jpg

監督:ベルトラン・ボネロ 出演:ノエミ・ルボフスキー アフシア・エルジ セリーヌ・サレット アリス・バルノル アデル・エネル ジャスミン・トリンカ イリアナ・ザベット
2011年 フランス 原題:House of Tolerance/L'Apollonide, souvenirs de la maison close
(20111024)

追伸
この映画は東京国際映画祭で観ました。公開は6月2日以降の予定です。


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コメント 19

hana2011

おはようございます。
フランス映画だけに、馴染みのある監督、俳優さんは見つかりませんでした。
どんなに良質でもこのような作品の公開は、難しいものがあるのでしょうね。
東京国際映画祭に行かれたのですね。羨ましいです!
by hana2011 (2011-12-07 07:42) 

non_0101

hana2011さんへ
おはようございます。nice&コメントをありがとうございました!
私もフランス映画はあまり観ないので、初めての監督さん&女優さんばかりでした~
でも、さすがに監督さんが厳選しただけあって、女優さんたちは本当に美しかったです。
フランス映画らしく内容的にはかなり陰鬱なところもあるのですけど
こういう機会でないと観られないような作品だったのでチャレンジしてみました(^^ゞ
東京国際映画祭は年に一度のお祭りのように楽しんでいます☆
by non_0101 (2011-12-07 08:46) 

non_0101

あいか5drrさんへ
こんにちは。niceをありがとうございました!
by non_0101 (2011-12-07 08:46) 

non_0101

コーヒーカップさんへ
こんにちは。niceをありがとうございました!
by non_0101 (2011-12-07 08:46) 

たいちさん

廓の花魁とダブらせて読ませていただきました。娼婦は古代から未来まで続く人間模様でしょうね。
by たいちさん (2011-12-07 16:08) 

non_0101

nikiさんへ
こんばんは。niceをありがとうございました!
by non_0101 (2011-12-07 22:25) 

non_0101

たいちさんへ
こんばんは。nice&コメントをありがとうございました!
吉原もそうですけど、娼館って男性には夢の場所かも知れませんけど
女性には怨念がこもっていそうな怖い場所に感じてしまうのですよね。
この物語を男性が観たらどんなふうに感じるだろうなと思いながら観ていました。
女性たちの様々な人間模様が描かれていました☆
by non_0101 (2011-12-07 22:28) 

non_0101

マチャさんへ
こんばんは。niceをありがとうございました!
by non_0101 (2011-12-07 22:29) 

non_0101

まぁくんさんへ
こんばんは。niceをありがとうございました!
by non_0101 (2011-12-07 22:29) 

non_0101

k_igaさんへ
こんばんは。niceをありがとうございました!
by non_0101 (2011-12-09 23:34) 

non_0101

ブラザーボブかきもとさんへ
こんばんは。niceをありがとうございました!
by non_0101 (2011-12-09 23:34) 

non_0101

Ritaさんへ
こんばんは。niceをありがとうございました!
by non_0101 (2011-12-09 23:34) 

non_0101

KEIさんへ
こんばんは。niceをありがとうございました!
by non_0101 (2011-12-09 23:35) 

non_0101

つむじかぜさんへ
こんばんは。niceをありがとうございました!
by non_0101 (2011-12-09 23:35) 

non_0101

Cherryさんへ
こんばんは。niceをありがとうございました!
by non_0101 (2011-12-09 23:36) 

non_0101

そらさんへ
こんばんは。niceをありがとうございました!
by non_0101 (2011-12-09 23:37) 

non_0101

yonta*さんへ
こんばんは。niceをありがとうございました!
by non_0101 (2011-12-09 23:37) 

なぎ猫

娼館の話と言うと、プリティ・ベビーを思い出します。
by なぎ猫 (2011-12-10 23:34) 

non_0101

なぎ猫さんへ
こんばんは。nice&コメントをありがとうございました!
「プリティ・ベビー」は未見ですけど、あらすじだけは知っていました。
今作も娼館で働く女性の自由にならない運命を切なくて美しく描いていました☆
by non_0101 (2011-12-11 10:09) 

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