SSブログ

マーラー 君に捧げるアダージョ [ま行]

偉大な作曲家&指揮者グスタフ・マーラーの生誕150年&没後100年を記念して製作された作品です。
曲は何となく聴いたことがあるけれど…くらいしか知らなかったのですけど、
予告編を観てから、どんな愛の物語が描かれているのかとても気になっていました。
全編に流れる美しい音楽の中で、苦悩に満ちた愛の姿がゆっくりと語られていきました。

マーラー(ヨハネス・ジルバーシュナイダー)は汽車に揺られながら、ある町へと急いでいた。
そこには精神分析を専門とする学者フロイト(カール・マルコヴィクス)が待っているのだ。
ようやくフロイトの待つホテルへ着いたマーラーだったが、フロイトが分析を始めようとすると逃げ出してしまう。
これまでも何度かキャンセルされていたフロイトが怒ってマーラーを追いかけると、
彼は外で話したいと言って歩き始めてしまった。
しかたなくマーラーに付いて行ったフロイトは、彼と妻アルマ(バルバラ・ロマーナー)の愛の話に
次第に引き込まれていった…

正直、芸術家の夫婦の愛は難しいな思いながら観ていました。

宮廷歌劇場音楽監督であり作曲家でもあるマーラーは、芸術家たちの集まっていたサロンで
美貌を誇る音楽家のアルマに恋をします。
二人の歳の差は19歳もあって、それでもお互いに惹かれていきます。
マーラーは彼女の輝くような笑顔に。
アルマはマーラーの持つ音楽家としての才能に。
アルマとしてはマーラーが彼女にとっての音楽の理想だったのかも知れません。
人生の中で一番大切な“作曲”という才能を高く引き出してくれるような男性と感じたのだと思います。
でも、アルマの作曲家としての才能はマーラーによって結婚前に否定されてしまいます。

その絶望は深かったと思うのです。
それでもアルマはマーラーと結婚します。その心境は本人にしか分からないのかも知れません。
だって、自分の人生の目的が否定されたようなものなのです。
また、マーラーは音楽以外のことには鈍感で、自分がアルマを絶望に追い込んでいるとは気付きもしません。
でも、フロイトの解析により、自分がアルマにどんなことをして来たのかを理解します。
そして、今の彼に出来ることはアルマを思って曲を創り続けることだけでした。

それにしても、二人の愛は複雑ですね。
結局、二人とも音楽を一番に思っていることが根底にあります。
それは観ている者にも分かりますけど、最初から厳しい結婚だっただけに、
特にアルマにとっては幸せな結婚だったとは言えなかったでしょう。
それでも、曲のためにマーラーのもとを去らなかったアルマは
やはり音楽を愛する芸術家ならではの選択だったのだなと感じました。

観始めた時は、マーラーって鈍感でひどい人だなと思ってしまったのですけど、
最後まで観ていると、この二人の出会いと結婚も運命だったのだなと感じました。
いつかこの二人から生まれた名曲たちを、じっくりと聞いてみたいなと思った1本です。

hitsuji_MAHLER-ON-THE-COUCH.jpg

監督:パーシー・アドロン フェリックス・アドロン 出演:ヨハネス・ジルバーシュナイダー バルバラ・ロマーナー カール・マルコヴィクス エヴァ・マッテス フリードリヒ・ミュッケ マヌエル・ヴィティンク マティアス・シュタイン
2010年 ドイツ/オーストリア 原題:MAHLER AUF DER COUCH/MAHLER ON THE COUCH
(20110430)

→公式サイトはこちらへ http://www.cetera.co.jp/mahler/


nice!(12)  コメント(20)  トラックバック(5) 
共通テーマ:映画

nice! 12

コメント 20

たいちさん

私は一時期、クラシックに凝って、よくコンサートへ行き、マーラーも何度か聞きましたが、マーラーの個人生活については知りませんでした。大変興味ある映画ですね。マーラー本人ともそっくりな容姿ですね。
by たいちさん (2011-05-04 19:37) 

non_0101

beamuseさんへ
こんばんは。niceをありがとうございました!
by non_0101 (2011-05-04 19:55) 

non_0101

月夜のうずのしゅげさんへ
こんばんは。niceをありがとうございました!
by non_0101 (2011-05-04 19:56) 

non_0101

佐々木さんへ
こんばんは。niceをありがとうございました!
by non_0101 (2011-05-04 19:56) 

non_0101

マチャさんへ
こんばんは。niceをありがとうございました!
by non_0101 (2011-05-04 19:56) 

non_0101

yu-papaさんへ
こんばんは。niceをありがとうございました!
by non_0101 (2011-05-04 19:56) 

non_0101

たいちさんへ
こんばんは。nice&コメントをありがとうございました!
私は何となく聴いたことがあるかなくらいしかマーラーの事を知りませんでした(^^ゞ
映画の中でも美しい曲がずっと流れていました。
曲の創られた背景を知ると、もっと曲のことが理解できますね。
今度、じっくりと聴いてみたいです☆
by non_0101 (2011-05-04 19:58) 

non_0101

chihoさんへ
こんばんは。niceをありがとうございました!
by non_0101 (2011-05-04 21:31) 

non_0101

erucatさんへ
こんにちは。niceをありがとうございました!
by non_0101 (2011-05-05 08:42) 

non_0101

ブラザーボブかきもとさんへ
こんにちは。niceをありがとうございました!
by non_0101 (2011-05-05 08:42) 

non_0101

りぼんさんへ
こんにちは。niceをありがとうございました!
by non_0101 (2011-05-05 08:43) 

KLY

それにしてもちょっと全てを明瞭に語りすぎな作品かなと…。
私も最初はマーラー最悪な奴だな、こりゃアルマが可哀想に
きまってんじゃん!と思って観てましたが、最後に向かって
どんどん全てが明らかになっていく。それも登場人物がはっきり
口にしたり、ハッキリ映像でみせちゃったり^^;
もう少し想像の余地や余韻を残して欲しかったです。
by KLY (2011-05-07 12:43) 

non_0101

KLYさんへ
こんにちは。コメント&TBをありがとうございました!
出だしで、あったことは事実だけど途中経過は想像みたいな言葉が出ていましたね。
いろいろな資料を参考にしているとは言え、こういうドラマになるのかと
ちょっと考えながら観ていました。
分りやすくてドラマティックだけど、激しかったです~
お互いの感情をぶつけ合ってからの二人を、もう少し見てみたかったです☆
by non_0101 (2011-05-07 13:00) 

なぎ猫

マーラーというと、私は”ベニスに死す”を思い出します。見に行きたい一本です。それにしても最近、作曲家ものが多い気がするのですが。
by なぎ猫 (2011-05-07 21:05) 

non_0101

なぎ猫さんへ
こんにちは。nice&コメントをありがとうございました!
美しい音楽の裏にドロドロの人間模様があるのだなと
改めて思う作品でした。
今年は本当に作曲家のドラマが多いですね~
見逃さないうちに、他の作品も観たいです☆
by non_0101 (2011-05-08 16:43) 

クマネズミ

はじめまして。
ひと月ほど前にご覧になった映画についてコメントをつけさせていただき、申し訳ありません。
ただ、なかなか優れた作品と思えるにもかかわらず、この映画のレヴューをアップされているブログが酷く少なく寂しい思いをしていたところ、こちらで大層きちんとしたレヴューをされているのを見てうれしくなりました。
特に、「全編に流れる美しい音楽の中で、苦悩に満ちた愛の姿がゆっくりと語られてい」くとか、「芸術家の夫婦の愛は難しい」、「二人の愛は複雑」と思われた点は同感です。
なお、マーラーは、「フロイトの解析により、自分がアルマにどんなことをして来たのかを理解」したと述べておられるところ、さらに進んで、フロイトがマーラーに、「私には奥さんが、まるでありもしない不倫を作り上げたかのような気がするのですよ」と述べていることを起点にして、アルマとグロピウスとの不倫関係は実はマーラーの妄想かもしれないと考えると、この映画を一層面白く見ることができるのでは、と思ったところです。
by クマネズミ (2011-06-08 21:46) 

non_0101

クマネズミさんへ
はじめまして☆ご訪問をありがとうございます。
そして、コメント&TBをありがとうございました!
マーラー自身も心の底では、アルマに自分の都合を強いて来たという事実を理解していたのかも知れませんね。
ただ、それが自分では素直に認められないのでフロイトを頼りにしたのかも知れません。
そして、アルマもそんな夫から離れることが出来なかったのかなと感じました。
マーラーの妄想というのも面白いですね。
それほどまでに心理的に苦労をしても、
最後まで夫婦でいた彼らの姿には考えさせられました☆
by non_0101 (2011-06-09 00:03) 

non_0101

Lionbassさんへ
こんにちは。niceをありがとうございました!
by non_0101 (2011-06-29 08:47) 

Lionbass

nice!押し逃げ失礼しました。
映画を見た上にパンフレットと「シナリオ」も読んだので、マーラーについての理解が深まったような気がしています。
一般に、1910年(死ぬ前の年)にはだいぶ「弱って」いたと思われていて、私もなんとなくそういうイメージを持ってましたが、そんなことはなかったようで、そうすると交響曲9番や10番についての認識も変わると思います。
(長文?失礼しました。)
TBさせてください。
by Lionbass (2011-06-29 09:47) 

non_0101

Lionbassさんへ
こんにちは。こちらこそご訪問をありがとうございます!
クラシック音楽には疎いのですけど、作曲家の背景が分かると
また違った目で音楽を楽しめるなと感じました。
この映画を観ると交響曲9番や10番をじっくり聞きたくなりますね☆
by non_0101 (2011-06-29 13:00) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 5

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。